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なぜ政府は「脱デフレ宣言」を避けるのか?

日銀利上げで経済はすでに正常化、日本復活の日は近い

勝又壽良

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岸田政権は、9月末に首相辞任で幕を閉じる。 その前に「脱デフレ宣言」が行われるのだろうか。

経済活動はすでに、脱デフレ状態にある。 日銀が、3月にマイナス金利を撤廃し、7月末には0.25%の利上げ行ったからだ。こうなると、政府の「脱デフレ宣言」がされない現状は、何とも奇妙な状態となる。 政府は、なぜ脱デフレ宣言を渋っているのか



なぜ政府は「脱デフレ宣言」をしない?

岸田政権は、9月末に首相辞任で幕を閉じる。 その前に、「脱デフレ宣言」が行われるのか。

これは、次期政権の経済政策を拘束することになるので、脱デフレ宣言は棚上げされたままになるであろう。

経済活動はすでに、脱デフレ状態にある。 日銀が、3月にマイナス金利を撤廃し、7月末には0.25%の利上げ行ったからだ。

こうなると、政府の「脱デフレ宣言」がされない現状は、何とも奇妙な状態となる。

政府は、なぜ脱デフレ宣言を渋っているのか。 それは、政治的な意味合いからだ。

脱デフレ宣言の条件は、次の4つとみられる。

1)経済指標の見極め
2
)賃金上昇の遅れ解決
3
)企業の価格転嫁拡大
4
)国民の共感と理解を得られる

新藤義孝経済再生担当相は、4月の時点で政府がデフレ脱却を宣言する際には、国民の共感が得られるような日本経済の姿を同時に示す必要があるとの認識を示している。

具体的には、実質賃金上昇率がプラスになって安定化する見通しがつくことであろう。

この状況が、7月の実質賃金がプラスになって実現した。 政治的な「脱デフレ宣言」まで至近距離にあることは確かだ。

賃上げしない企業は「アウト」

脱デフレ条件では、賃金上昇率の引き上げが重視され、それには企業の価格転嫁拡大が不可欠とされてきた。

今春闘では、労働力不足という決定的な要因によって、5%賃上げが実現した。 労働力の供給状況からみて今後も、5%賃上げが不可欠な労働環境になっている。

これを満たせなければ、企業の継続性が危ぶまれる事態になってきた。 つまり、倒産リスクがつきまとう時代に変化しているのだ。

ただし、労働力不足下であり労働者に企業倒産のしわ寄せは行きにくい。 転職によって、新たな職場が得られるからだ。

脱デフレ条件の4項目の中で、(1)の経済指標の見極めは、経済政策の要である。

政府は、消費者物価指数、GDPデフレーター、需給ギャップなどを点検しなければならない。

だが日銀は、マイナス金利撤廃や今回の利上げで経済指標の見極めを慎重に行っている。 それは、日銀が四半期毎に発表する「展望リポー」で詳述されているのだ。 結局、日銀による一連の金利操作が、日本経済がデフレ状態を脱したと判断したうえでの決定である。

日銀が、ここまで独自の判断で行動できるのは、日銀法改正(1998年実施)によって政府の桎梏を離れた結果だ。

それ以前は、政策変更のたびに大蔵省(財務省)へお伺いを出すほかなかった。

戦時中の法改正によるものだ。 日銀は、「大蔵省日本橋出張所」とまで揶揄されていた。

平成不動産バブルは、大蔵省が日銀の利上げを阻止した結果でもある。 これが、日銀法改正へ繋がった理由である。

日銀は、今後の消費者物価状況について、どのような見方をしているのか。

「展望リポート」(7月)では、次のように指摘している。

2024年度:2%台半ば
2025
年度:概ね2%程度
2026
年度:概ね2%程度

「消費者物価の基調的な上昇率は、需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率の上昇に伴い徐々に高まっていくと予想される」としている。 日銀は、年後まで明快に消費者物価上昇率を予測している。 日銀が、ここまで物価状況を見通しているのは、仮にこの路線から外れた上昇が起これば、金利操作するという宣言でもあるのだ。

単なる「他人任せ」での物価見通しでないことに留意すべきである。 とりわけ、円投機筋には重大な警告となろう。

円キャリートレードでは、金利が安定していることが絶対条件とされている。

その点で、これまでの日本は「ゼロ金利」「マイナス金利」を続けてきたので、円投機筋にはまたとないチャンスであった。 あたかも「ハゲタカ」のように円投機に走ってきた。

だが、日銀は金利操作の自由を得た以上、これまでのように円投機筋へ「好き勝手」なことをさせないであろう。

異常円安は、日本のGDPを世界4位へ引下げる大きな要因になった。 こういう事態は、二度とあってはならないのである。

米国で日本企業が投資首位

日本は、「ゼロ金利」「マイナス金利」に象徴されるように、金利のない世界であった。

金利のない世界は、無風状態を意味する。 ビジネスチャンスが生まれないのだ。

こうして企業活動は、国内よりも海外へ向っていった。

例えば、米国での対内直接投資では、日本企業がトップになっている。 日本国内で行うべき投資が、米国で行われていた。 その実例を見ておきたい。

米商務省によれば、自動車を筆頭に日本企業の対米直接投資残高(23年)は7832億ドルと19年から世界一が続く。

カナダ・ドイツ・英国・フランスを抜いていたのだ。

これは、日本企業が、活躍できる舞台さえ整えば、国を問わずいかようにも投資できるという例である。

数値化は難しいが、それ以外にも巨額の寄付金や教育、環境などへの社会貢献があると指摘されている。

マサチューセッツ工科大学は、経済複雑性という指標ECI)ランキングを発表している。

輸出する製品の多様性、偏在性、洗練の度合いから国・地域を順位づけするものだ。 日本は、2000年から22年まで首位を守っている。

GDPは、周知のように国や地域のモノ・サービスを生産する力をみる指標である。

一方、前記のECIは、複雑で難易度の高いモノを多くの分野で開発する力をみる指標とされている。

日本以外では台湾が3位、韓国が4位、米国が10位、中国は上昇傾向にあるが、現在22位(いずれも22年)である。

以上は、『日本経済新聞 電子版』(819日付)で、日経コメンテーター中山淳史氏が指摘した点だ。

ECI指標で、日本企業が2000年以来1位であることは、日本へ大きな希望を与えてくれる。

日本のものづくり開発力が、いささかも衰えていないことは何を意味するのか。

同時に、日本国内での疲弊した状態はなぜ起こったのか。 まさに、二律背反ともいうべきことだ。

カリフォルニア大学のウリケ・シェーデ教授は、日本の隠れた実力を分析した近著『シン・日本の経営』で日本の製造業が「悲観バイアス」に陥り、実力相応の評価に気づいていない点、さらにECIに貢献していると見られる日本企業に共通する特徴を7つの「Pとして指摘している。 そのうちの1つがパラノイア(偏執症)だという。

例えば、米国での対内直接投資では、日本企業がトップになっている。 日本国内で行うべき投資が、米国で行われていた。

その実例を見ておきたい。

米商務省によれば、自動車を筆頭に日本企業の対米直接投資残高(23年)は7832億ドルと19年から世界一が続く。カナダ・ドイツ・英国・フランスを抜いていたのだ。これは、日本企業が、活躍できる舞台さえ整えば、国を問わずいかようにも投資できるという例である。


数値化は難しいが、それ以外にも巨額の寄付金や教育、環境などへの社会貢献があると指摘されている。

マサチューセッツ工科大学は、経済複雑性という指標ECI)ランキングを発表している。輸出する製品の多様性、偏在性、洗練の度合いから国・地域を順位づけするものだ。

日本は、2000年から22年まで首位を守っている。

GDPは、周知のように国や地域のモノ・サービスを生産する力をみる指標である。

一方、前記のECIは、複雑で難易度の高いモノを多くの分野で開発する力をみる指標とされている。

日本以外では台湾が3位、韓国が4位、米国が10位、中国は上昇傾向にあるが、現在22位(いずれも22年)である。

以上は、『日本経済新聞 電子版』(819日付)で、日経コメンテーター中山淳史氏が指摘した点だ。

ECI指標で、日本企業が2000年以来1位であることは、日本へ大きな希望を与えてくれる。 


日本のものづくり開発力が、いささかも衰えていないことは何を意味するのか。

同時に、日本国内での疲弊した状態はなぜ起こったのか。 まさに、二律背反ともいうべきことだ。 

カリフォルニア大学のウリケ・シェーデ教授は、日本の隠れた実力を分析した近著『シン・日本の経営』で日本の製造業が「悲観バイアス」に陥り、実力相応の評価に気づいていない点、さらにECIに貢献していると見られる日本企業に共通する特徴7つの「Pとして指摘している。 そのうちの1つがパラノイア(偏執症)だという。

企業に「パラノイア」健在

すぐに思い当たるのが、半導体企業ラピダスの旗揚(☜ LINK)である。

世界の半導体で「周回遅れ」と言われながら、世界最先端半導体「2ナノ」(ナノは10億分の1メートル)という、まったく未知の分野へ挑戦したことだ。

これは、パラノイアの典型例であろう。

ラピダスは、創業者だけがパラノイアでなかった。

日本の半導体現場で働いている4050代の人たちが、「夢よもう一度」でラピダスへ毎月100人単位で転職したという。 この人たちも、紛れもなくパラノイアであろう。

こうして、日本中に存在した半導体パラノイアが結集して、半導体生産で世界初の「前工程・後工程」統合という離れ業を現実のものにした。

私は、この話を書くたびにある種の感動を禁じ得ないのである。 日本の技術開発を巡る底力が、発揮された実例として記憶されるべきであるからだ。

ラピダスの立ち上げは、最初に自民党元幹事長の甘利明氏が米国IBMからの提携打診に応じて動いた。

甘利氏は、ソニーに勤務していた経験があった。 ソニーは半導体メーカーでもあり、甘利氏には半導体知識があったはずで、すぐに自民党重鎮の安倍晋三氏や麻生太郎氏らと図って自民党に半導体部会を立上げ応援態勢を固めた。 こういう経緯があって、政府のラピダス創業への支援が始まったのである。

日本国内が、バブル崩壊後30年間も前へ進めなかったのは、過剰債務の処理で時間を費やしたからだ。

この間に、消費者心理は完全に冷え切った。 賃上げも名ばかりで、値上げしないことが最大の消費者アピールとなった。

こうして、「無風状態」へ陥った。 ビジネスが動ける世界でなかったのだ。

日本企業が、海外とりわけ米国で投資したのは当然であろう。 それが今、大きく変わり始めた。 日本の金利復活は、競争の復活でもある

投資をすれば、それに見合った利益を生み出す環境になった。 日本は、「死海」から「太平洋」へ戻ったと言えよう。

GDPは健康体復活を証明

日本経済が、顕著な回復をみせたのは今年の46GDP統計である。 明らかに従来と異なる局面が展開してきた。

46月期GDP速報値は実質で前期比0.8%増、年率換算で3.1%増になった。

実質GDP2四半期ぶりのプラス成長となった。 名目GDPは年率7.4%増である。 実額は年換算で607兆円と、初めて600兆円を突破した。

岸田首相は、「賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行を示す数字」と語った。

とりわけ重要なのは、雇用者報酬が前年比で3年ぶりにプラスに転じ、個人消費が改善したことである。

個人消費は実質で前期比1.0%増と5四半期ぶりのプラスへ。 設備投資は前期比0.9%増になった。

この背景には、好調な企業業績によって、賃上げや投資が活発になっていることが上げられる。

企業は、労働力確保の目的から世間並み以上の人件費支払が求められる時代環境になった。

これには、積極的な設備投資によって生産性を引上げることが不可欠である。

こういう状況から、先行きも賃上げ効果が広がり設備投資を押上げる好循環過程で、景気回復が続くとみてよいであろう。

事実、79月期についても引き続き好循環が維持できる環境だ。

これまで、マイナスだった実質雇用者報酬が前年比でプラスに転じており、79月期の個人消費はプラスを維持しやすい状況にある。

9月末には、新政権が誕生する。 岸田政権が積み残した問題の解決が求められる。 とりあえず次の2点の実行を迫られよう。

1)脱デフレ宣言を行う。 日本経済が新しい段階へ進むことを示す。
2
)財政膨脹へ歯止めを付ける。 利子のある世界へ復帰する以上、節度が求められる。

脱デフレ宣言は、再びデフレに戻らない決意を示す宣言でもある。 インフレ抑制が、新たな問題になることでもある。

高齢社会でのインフレは、稼得能力のない者には生活が直撃される。

したがって、輸入インフレを瀬戸際で遮断するには、円高基調が不可欠である。 これまでは、国内をインフレにして消費者物価を2%以上に引き上げることが眼目であった。

この目的が達成された以上、これからは構造的にインフレを抑制する政策装置を付けるべきで、それには金利政策を活用することだ。

日本経済が、自立的に好循環過程を進むには、大企業による価格転嫁阻止を厳重に取り締まるべきだ。

大企業が、中小企業の納入価格引上げを阻止することは、賃金格差を生む大きな要因である。

公正取引委員会は、引き続き大企業の行動を監視すべきである。

これによって、名目GDP成長率が実質GDP成長率を上回る状況になれば、歳入が確実に増えるはずである。

この歳入増が、財政膨脹に繋がることを防ぐ装置も必要である。 今後の本格的な人口減社会の到来を想定すると、財政再建がさらに重要な課題になる。

減少する人口で、過大な国債をいかに返済するか。 この際、返済ルールを明確にして国民共通の認識にすべきである。

    それには、高い名目GDP成長率維持が不可欠である。 5%以上の賃上げを実現すること。 それに必要な設備投資が行われれば可能である。 ・・・ (記事一部抜粋)




 

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