台風8月に多発、久々の東北横断
6月(梅雨時期)の大気の流れの模式図。 等値線は海面気圧の平年値(1991年~2020年の30年平均値)。
モンスーントラフ、影響か
2024.08.16.
朝日新聞デジタル
8月に入って立て続けに台風が発生し、しかも、長年なかった太平洋側から「東北横断」する経路の台風も発生した。
昨今の台風の状況には、いったい何が影響しているのか。
気象庁によると、今年1~7月に発生した台風が4個に対し、8月はすでに5号から8号までと多発している。
要因として指摘されているのが、日本の南のフィリピン付近の海上にできている「モンスーントラフ」の存在だ。
フィリピン付近では南西方向からの季節風(モンスーン)と貿易風(東風)がぶつかり合うことで風が収まり、気圧の谷(トラフ)となる。
その領域がモンスーントラフと呼ばれる。「台風の巣」のような存在で、上空には大きな風の渦ができ、台風が次々と発生しやすくなっているという。
12日に岩手県に上陸した台風5号は、気象庁が1951年に統計を開始して以降、東北の太平洋側に上陸した3例目だった。その希少例も、モンスーントラフの影響とみられている。
1例目は岩手県に大きな被害を与えた2016年8月の台風だが、このときもモンスーントラフが発生していた。
台風は通常、日本側に張り出した太平洋高気圧に押されて東北まで北上する前に西に進むことが多い。
このため、東北に太平洋側から上陸することは、統計開始から65年なかった。
横浜国立大台風科学技術研究センターの副センター長を務める坪木和久・名古屋大教授(気象学)によると、モンスーントラフが発生すると、それに連動して太平洋高気圧が東に退く傾向があるという。その結果、台風は西進せずに北上し、東北を東から西に横断できたという。
「モンスーントラフはまれにできる。なぜ起きるのかは今後の研究対象だ」。
坪木教授はそう話す一方で、今後の備えを指摘する。
「気候大変動の時代なので、未経験の気象がいつ起きてもおかしくない。山が海に迫った場所では台風の時、特に大雨になりやすい。東北の沿岸は、そうした地形が多いので、台風が今後も上陸することを前提にハザードマップをしっかり確認して欲しい」
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