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大阪万博「関連費」に約13兆円 


便乗の広域開発「理解できない」 

2024.5.22

「大阪・関西万博」も略称で、正式名称は「2025年日本国際博覧会」。日本での万博としては、愛知県で開催された「2005年日本国際博覧会(略称=愛・地球博)」以来、20年ぶり6回目となる。万博は、国際博覧会条約に基づき、仏パリに本部を置く博覧会国際事務局(BIE)に承認されたイベントである。 

今回は、批判も多い、膨れ上がる万博関連予算や経済効果について見ていく。



3つのポイント

  1. 会場建設費の上振れに批判が相次ぐ
  2. 巨額のインフラ整備関連費に厳しい声
  3. 経済効果は「拡張万博」の実現が鍵

 万博が多くの人から“敬遠”される大きな要因は、人手や資材不足による建設単価の急騰に伴って膨れ上がった予算だ。

 「費用の抑制に向け、政府として管理、監督責任を果たす。さらなる増額を認めるつもりはない」。

岸田文雄首相は2311月の衆院予算委員会で、会場建設費の上振れが続いた大阪・関西万博についてこう強調した。

 

会場建設費2度の修正

会場建設費は誘致時の1250億円から、20年に1850億円、23年秋は最大2350億円に膨らんだ。資材や人件費の高騰が主因だ。会場建設費は国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する。人件費や警備費などを含む運営費も当初想定の809億円から23年末には約1160億円と改められた。

 建設費用が2度修正されたことについて「予算管理ができていない。国家プロジェクトなのに一体何をしているのか」と批判が噴出した。

 大阪・関西万博の中止を求めている大阪市の市民団体「どないする大阪の未来ネット」の馬場徳夫事務局長は「万博会場となる夢洲(ゆめしま)の土壌改良費用などを計上する夢洲土地造成事業の収支見込みは長期赤字だ」と指摘する。

 こうした中、周辺のインフラ整備などで巨額の費用がかかることも明らかになった。

 政府の国際博覧会推進本部事務局が2312月(242月更新)に公表した大阪・関西万博関連の国の費用によると、会場建設費以外に、インフラ整備計画関係の施策として約97000億円、「空飛ぶクルマ(LINK) の実現や水素発電技術の実証などの「アクションプラン」に登録された施策に約28000億円などが計上された。

会場建設費や日本政府館建設なども含め、万博関連費用は総額約13兆円に及んだ。

具体的に見ていく。例えば、関西地方の「広域的な交通インフラ整備」には約59280億円を計上。新名神高速道路や淀川左岸線、四国横断自動車道などの整備や、なにわ筋線の整備、大阪モノレールの延伸などが含まれている。

 万博関連の公共投資について、阪南大学経営学部の桜田照雄教授は「公共事業の決定手続きは、民主性・透明性・合理性・公正性がクライテリア(基準)だ。それを踏まえると、大阪・関西万博の運営と、四国や紀伊半島などでの道路建設との因果関係が理解できない」と指摘。さらに「数分の時間短縮しか望めないなにわ筋線の建設など『(万博という)イベントを利用した都市開発』という手法そのものにも疑問がある」とする。

 政府は、こうしたインフラ関連費用について「大阪・関西万博後も社会経済活動を支える基盤として継続的に利用されるものであり、万博のための新規または追加的なものではない」と説明している。

2411日に石川県で発生した能登半島地震。最大震度7が観測され、多くの人が避難生活を余儀なくされた(写真=共同通信)

そんな中、2411日に石川県を中心に能登半島地震が発生した。

 

「イベントは楽しめるのか」

 被災者が多くいるのに、万博を開く必要があるのか──。

 震災後「中止すべきだ」などと、開催効果を疑問視する声も強まった

 大阪市に住む女性は「避難生活を強いられている人もいる。そんな中、誰が行くのか。イベントを楽しめる雰囲気ではない」と語る。


もっとも、万博開催の経済効果はすでに算出されている。

民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)は今年3月、27457億円(基準ケース)になると試算した。

同研究所は、万博開催を奇貨として関西全域に来訪者を呼び込む工夫をすることで、宿泊数や日帰り客の数を向上させる「拡張万博」の開催を提唱する。

 試算では、関西地域間産業連関表を活用した万博関連事業費の経済効果(生産誘発額)が14104億円、消費支出の経済効果(同)が13355億円だった。消費支出は、広域関西エリアから約1560万人、関西以外の国内から約910万人、海外から約350万人が来場すると想定した。

 拡張万博の効果は消費支出に現れる。国内宿泊客や海外客の宿泊数が増えると想定した「拡張ケース1」では32384億円、拡張ケース1に加えてさらに国内日帰り客が20%増えるとした「拡張ケース2」では33667億円になった。

若い経営者の挑戦に価値

 同研究所の稲田義久・研究統括は「経済波及効果を府県別で見ると、基準ケースでは大阪府が75%を占める。

一方、拡張ケースでは他府県のシェアが上昇し、『拡張ケース2』になると、大阪府のシェアは53%まで低下する。

関西各地が連携し魅力的なコンテンツを提供できれば、経済波及効果をもっと高められる」と話す。

 例えば、3年に1度、岡山と香川両県の島々などで開かれる瀬戸内国際芸術祭は万博開催期間に開かれる予定で、連携による相乗効果が期待できるという。

 経済産業省も万博の経済効果は約29000億円と試算する。

経産省の関係者は「万博の経済波及効果はインプットに対するアウトプットであり、短絡的なもの。万博は、若い経営者のチャレンジ精神を引き出すプライスレスの大きな価値がある」と話す。

万博は日本の技術を世界中に発信したり、次世代につなげたりする絶好の機会になり、数字では測れない効果もある。

今後、万博の効果を最大化させるための議論や工夫がさらに必要になるだろう。                    

(出典:日経ビジネス)


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