株価以外すべて破壊「日本人の給料を下げ続けたトヨタ」失われた30年の真実
2024.06.19
by 大村大次郎
もう手遅れかもしれない。それでも私たち国民は「トヨタこそ日本が誇る優良企業だ」という洗脳から抜け出す必要がある。平成の失われた30年、先進国でほぼ唯一賃金が上昇しなかったわが国。トヨタの大躍進と反比例するように、日本経済が没落していったのはなぜなのか。元国税調査官の大村大次郎氏が、日本経済最大のタブーに斬り込む。
トヨタは日本経済に「貢献していない」衝撃の事実
本メルマガでは、前2回で「近年の日本の税制はトヨタなど大企業ばかりを優遇している」ということをご説明してきました。
【前回】日本を滅ぼす「トヨタの大罪」を国税OBが告発。輸出戻し税はトヨタへの補助金、嘘でもデマでもない税逃れ国富収奪30年
筆者は、定期的にエゴサーチをしているのですが、本メルマガの記事に対して、
「トヨタは日本の基幹企業なんだから大事にするべし」
「トヨタの社員は潤っているんだから間接的に日本経済に貢献している」
という反対意見をチラホラ見かけました。
そういうふうに思っている日本人も多いと思います。が、これらの意見はとんでもない勘違いをしています。
確かにトヨタは日本最大の企業であり、日本経済にとって重要な存在です。トヨタがつぶれれば、日本経済は大きな打撃を受けるでしょう。だからといって、トヨタばかりを優遇する税制を続けていれば、ほかの産業にひずみが出て、結果的には日本経済を停滞させることになります。
実際、現在の日本経済はそうなっているのです。
トヨタは、近年、世界最大の自動車販売を何度も記録し、史上最高収益を何度も更新しています。
しかし、トヨタの大躍進と反比例するように、日本経済は衰退しています。
「トヨタの社員は潤っているから間接的に日本経済に貢献している」というのは、あきらかに大きな勘違いです。
というより、トヨタはこれだけ儲かっていて、税金もほとんど払っていないのに、この2~30年、社員の賃金をケチりにケチってきたのです。
日本人の賃金が下がったのはトヨタが原因
2002年から現在まで、トヨタがベースアップしたのは、2年に1度程度です。
特に2003年から2005年までの5年間、ベースアップをまったくしませんでした。
トヨタは2004年に過去最高収益を上げているにもかかわらず、ベースアップがなかったのです。
このトヨタの賃金ケチり政策は、トヨタの社員だけではなく、日本全国の企業、サラリーマンにも大きな影響を与えたのです。
ご存知のようにトヨタは日本最大の企業です。トヨタの賃金政策は、そのまま全国の日本企業に波及します。
「トヨタがベースアップしないなら、うちもベースアップしなくていい」ということになるのです。
特に、史上最高収益を出した2004年前後でさえ、ベースアップをしなかったということは、労働界に大きな衝撃を与えました。トヨタのような好業績の企業でさえ、ベースアップしなかったということは、業績がそれほどよくない企業は、まったくベースアップをしないし、業績が悪い企業は、大手を振って賃金を下げることになります。
その結果、日本経済はどうなったでしょうか?賃金が下がりっぱなしとなったのです。
この30年の間、先進国で賃金が上昇しなかったのはほぼ日本だけなのです。
日本はあまりに賃金が上がらなかったので、現在では韓国よりも賃金が低くなってしまいました。
そして、賃金が上がらなければ、国民の生活は豊かにならず消費も冷え込みます。景気がよくなるはずがないのです。
「平成の失われた30年」の最大の元凶は低賃金であり、その流れをつくったのはトヨタだといえるのです。
トヨタの開発トップが中国企業へ引き抜かれる
トヨタの社員を大事にしない低賃金政策は、トヨタ自身の首を絞めることにもなっています。
2021年にはトヨタのカムリの開発者責任者が、中国の自動車メーカー「広州汽車集団」に引き抜かれたという報道がありました。日本企業の最高峰の技術者が、中国企業に転身したということです。
このカムリの開発責任者は、「広州汽車集団」の製造部門のトップに据えられました。
カムリというのは、現在のトヨタを代表する車種であり、アメリカで16年連続売上1位を記録した世界戦略の主力車です。
このカムリが2017年にフルモデルチェンジをしたときの開発トップが、中国メーカーに移ったのです。日本としては大変な損失と言っていいでしょう。
実はバブル崩壊以降、日本の大勢の技術者たちが韓国や中国の企業に引き抜かれました。
韓国や中国の工業が、この2~30年で急激に発展した背景には、日本人技術者の存在があるのです。
日本人技術者が、中韓企業に移った最大の理由は、日本での賃金が低すぎたことです。
そして、日本人の賃金低下の大きな原因として、トヨタの「低賃金政策」があるのです。
「トヨタこそ日本経済の武器」という洗脳から脱却せよ
日本経済の最大の武器は、自動車産業でもトヨタでもありません。「有能で勤勉な国民」です。
しかし政府や大企業は、この有能で勤勉な国民に対して、まっとうな報酬を払ってきませんでした。
今、日本が衰退している最大の理由は、ここにあるのです。トヨタは、ここ数年の春闘では組合側の要求に対して満額回答をしています。以前のトヨタでは考えられないほどの大盤振る舞いです。「社員の賃金を下げることは企業自身の将来を危うくする」ということに今さらながら気づいたのでしょう。
が、気づかないよりはマシではありますが、「失われた30年」を取り戻すにはまだまだ全く不足しています。
2000年代、史上最高収益を出した時にも賃上げをしなかったケチケチトヨタの罪は大きいのです。
これまで述べてきたようにトヨタは、この2~30年の間、史上最高収益を何度も更新し、税金でも優遇されていたのに、従業員の賃金は極限まで削ってきました。
では一体、何にお金を使ったのかというと株主への「配当金」なのです。
トヨタは株主の方だけを向く
トヨタは、この2~30年の間、配当金が爆上がりし、2000年代前半から現在までの間に配当金の額は約10倍にも達しているのです。
つまりトヨタは、日本国に税金も払わず従業員の賃金もケチり、ひたすら株主の方に莫大な利益を貢いでいたのです。
資本主義というのは、利益に株主を還元する経済システムではありますが、それはきちんと税金を納め、社員にまっとうな賃金を払った上での話です。
トヨタのやり方は、資本主義のモラルを完全に逸脱するものです。
しかも昨今のトヨタの株の多くは外国人に握られています。言ってみれば、トヨタは外国人投資家に貢ぐために存在するというようなものなのです。
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