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何回説明しても伝わらないのはなぜ?

実は原因が「言い方」ではなかった!

2024.05.09

 by 毎日3分読書革命! 

ビジネス現場で頻発するコミュニケーションの問題。あなたも遭遇したことはありませんか? 今回 土井英司さんが、その問題の解決策を認知心理学の視点から解説する一冊を紹介しています。



【伝わるための認知科学】⇒『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』

本日ご紹介する一冊は、『言語の本質』が話題となった、慶應義塾大学環境情報学部教授、今井むつみ先生によるコミュニケーション本。

言語の本質 

 今井 むつみ

ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。現在は慶應義塾大学環境情報学部教授。

専攻は認知科学、言語心理学、発達心理学。

著書に『英語独習法』(岩波新書)、『学びとは何か――〈探究人〉になるために』(岩波新書)、『算数文章題が解けない子どもたち――ことば、思考の力と学力不振』(岩波書店、共著)、『ことばと思考』(岩波新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)、『親子で育てることば力と思考力』(筑摩書房)、『言葉をおぼえるしくみ――母語から外国語まで』(ちくま学芸文庫、共著)など

 ■本書の目次(一部抜粋)■

はじめに

第1章 オノマトペとは何か

第2章 アイコン性――形式と意味の類似性

第3章 オノマトペは言語か

第4章 子どもの言語習得1――オノマトペ篇

第5章 言語の進化

第6章 子どもの言語習得2――アブダクション推論篇

第7章 ヒトと動物を分かつもの――推論と思考バイアス

終 章 言語の本質



認知科学、言語心理学、発達心理学を専門とする著者で、毎回、言葉と思考の奥深い世界を垣間見させてくれます。

今回の著書『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』では、ビジネス現場で頻発するコミュニケーション問題の本質と解決策を、認知心理学の視点から詳しく解説。

間違っているのは「言い方」ではなく「心の読み方」

とあるように、言葉の前に考えなくてはならない発信者の心理や、それを受ける人の心理が書かれており、じつに興味深い内容です。

スキーマの違いにより、伝え手と受け手の間に理解の差が生まれる問題、人の記憶力の問題、過剰一般化の問題、記憶書き換えの問題、各種の認知バイアスの問題…

ビジネス現場での「伝わらない」問題の本質がじつに明確に説明されており、リーダーはぜひ読むべきと思いました。

どうすれば、伝え手と受け手の認識・理解のギャップを埋められるか、どうすれば正確なコミュニケーションができるか、コミュニケーションのヒントが満載です。

コミュニケーションミスから起こった痛ましい飛行機事故の例や、反対に危機から乗客を救った機長の意思決定の例が載っており、認識と言葉の問題は奥深いと思いました。

インターネットやメディア、部下からの報告など、何かを聞いた時に、どこを疑うべきなのか、勘所が書かれているので、日々の意思決定の参考になると思います。

本筋とは逸れますが、記憶や勉強のコツなども書いているので、受験生にも有用な内容だと思います。

 

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

1.     間違っているのは「言い方」ではなく「心の読み方

2.     そもそもコミュニケーションの前提には「スキーマ」があります。

私たちはそれぞれが頭の中に、「当たり前」を持っており、その「当たり前」は皆、同じわけではありません

3.     「伝えたいことがうまく伝わらない」原因は、この「当たり前」の違いを越えることができなかったり、認知の力がうまく働かなかったりすることにある

4.     私たち人間は、相手の話した内容をそのまま脳にインプットするわけではない

5.     ある人の「わかる」「わかった」は、あくまで「その人のスキーマ」を通してのものである

6.     言った側と言われた側で、その情報の重要度が違う

7.     銃口を突きつけられたとき、人は、銃を凝視することがわかっています。

それも、犯人の顔はいっさい記憶に残らないくらい、銃だけをひたすら見続けるそうです

8.     レイプにあったその女性は、ナイフを突きつけられていました。多くの人は、「自分を襲った犯人の顔なら、はっきり覚えているはずだ」と考えてしまいますが、その女性の視線はおそらく、突きつけられたナイフに向けられていたはずです。

そう、そもそも被害女性は犯人の顔をほとんど見ていなかった可能性があるのです

9.     私たちが何かを記憶しようとする際には、意味を考えずに丸暗記しようとしたりするよりも、「理解」というプロセスを経て記憶にたどり着くことを目指したほうが、スムーズであり記憶しやすい

10.   過剰一般化が「伝わらない」の原因に

    ※) 過剰一般化(overgeneralization) とは、ある言語規則をその規則が適用されない状況にも当てはめてしまう誤用。

11.  多様性を認めることはとても大切なことですが、それが極端になりすぎる場合があります。相対主義の罠です。すべての問題において「それぞれ違っていて、それぞれいい」という立場が行きすぎると、重要な判断ができなくなってしまう可能性が生じます

12.  意図読みが得意な人は、テストでも出題者の意図をうまく読み取ることができるため、正答できることが多い 

 

「うまく伝わらない」という悩みの多くは、

「言い方を工夫しましょう」「言い換えてみましょう」
「わかってもらえるまで何度も繰り返し説明しましょう」では解決しません
人は、自分の都合がいいように、いかようにも誤解する生き物です。
では、都合よく誤解されないためにどうするか?
自分の考えを“正しく伝える”方法は?
「伝えること」「わかり合うこと」を真面目に考え、実践したい人のための1冊です。
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【目次】


はじめに 認知科学者が教えるコミュニケーションの本質と解決策

第1章 「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」かもしれない
 「人と人は、話せばわかり合える」ものなのか?
 「話せばわかる」とはどういうことか?
 「話せばわかる」の試練――記憶力の問題
     人の記憶はどこまで「曖昧」なものなのか
 「相手にわかってもらえる」を実現する方法を考えよう

第2章「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか?
「言えば伝わる」「話せばわかる」を裏側から考える

   言っても伝わらないを生み出すもの① 「理解」についての2つの勘違い
 言っても伝わらないを生み出すもの② まんべんなく公平に見渡す」ことはできない、視点の偏り
 言っても伝わらないを生み出すもの③ 「専門性」が視野を歪ませる
 言っても伝わらないを生み出すもの④   人間は「記憶マシーン」にはなれない
 言っても伝わらないを生み出すもの⑤   言葉が、感情が、記憶をどんどん書き換えていく
 言っても伝わらないを生み出すもの⑥ 「認知バイアス」で思考が止まる

   様々な思い込みと認知バイアス

第3章「言えば→伝わる」「言われれば→理解できる」を実現するには?
ビジネスの現場に、日常生活に認知科学をどう落とし込むか
「相手の立場」で考える
ビジネスで「相手の立場に立つ」ための「心の理論」
ビジネスで「相手の立場に立つ」ための「メタ認知」
「相手の立場」に立てる人のコミュニケーション
感情」に気を配る
感情を味方につけるコミュニケーションのコツ
「勘違い」「伝達ミス」を防ぐ
「伝わる説明」を、具体と抽象から考える
「意図」を読む

第4章 「伝わらない」「わかり合えない」を越える
コミュニケーションのとり方
「いいコミュニケーション」とは何か?
「コミュニケーションの達人」の特徴① 達人は失敗を成長の糧(かて)にしている
「コミュニケーションの達人」の特徴② 説明の手間を惜しまない
「コミュニケーションの達人」の特徴③ コントロールしようと思わない
「コミュニケーションの達人」の特徴④ 聞く耳」をいつも持つ

終章 コミュニケーションを通してビジネスの熟達者になるために
 ビジネスの熟達者とコミュニケーション
 ビジネスの熟達者になるための「直観」

後半の認知バイアスの部分は、類書でも読めますが、

第1章 「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」かもしれない

第2章 「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか?

 は、読み応えがありました。




 

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