「ハマスだけが悪」は本当なのか?
パレスチナ:ハマスの「アクサーの大洪水」攻勢。なぜこうなった?
知っておくべき“世界標準の真実”
2023.10.12
by 『きっこのメルマガ』
「パレスチナのガザ地区を実効支配する武装勢力・ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃」がきっかけとなり、緊迫が高まる中東情勢。欧米や日本ではハマスのみを非難する報道がなされていますが、異なる見方も存在するようです。今回 『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、複雑極まるイスラエルとパレスチナの歴史を詳しく解説するとともに、日本メディアが伝えない「10月7日に始まった衝突の真実」を紹介。その上で、「世界標準」の事実を知る重要性を訴えています。
日本のマスコミがほとんど報じない、パレスチナ側からの視点で考える「ハマスの真実」
現在のロシアによるウクライナへの軍事侵攻について報じる日本のマスコミの、あまりにも偏向的なテレビニュースや新聞記事から気づいた人も多いと思いますが、日本のマスコミが報じている内容は、ザックリ言って世界で起こっていることの半分だけ、西側諸国から見た西側諸国の立場での報道だけです。
たとえば北朝鮮、日本のマスコミが報じる内容だけを鵜呑みにしている人たちは、北朝鮮が世界の国々から完全に浮いている「ならず者国家」だと思っている人が大半だと思います。しかし実際には、北朝鮮は30年以上も前から国連に加盟している正式な国家ですし、中国を筆頭にロシア、ブラジル、インド、ドイツ、パキスタン、タイ、フィリピン、コスタリカを始めとした国々と、普通に貿易をしている普通の国家なのです。
北朝鮮の拉致問題を支持率稼ぎに利用して来た安倍政権を始めとした自民党政権は、選挙が近づくたびに「国際社会と連携して拉致被害者を取り戻す」などと「絵に描いた餅」を連呼し、唯一の対抗策として「北朝鮮への経済制裁」を掲げて「やってる感」をアピールして来ました。
しかし、日本が貿易を規制したところで、日本以外の多くの国々と普通に貿易している北朝鮮にとっては、何の制裁にもなりませんし、痛くも痒くもないのです。
ロシアによるウクライナ侵攻にしても、日本のマスコミは西側諸国の立場からの報道しかしません。
これは、ある意味、戦時下の「大本営発表」と五十歩百歩なのです。
事実、今、ウクライナが必死にロシアから取り戻そうとしているクリミア半島は、アメリカにもロシアにもイイ顔をしたかった八方美人の安倍晋三が、「親友」と呼んでいたプーチンに上納したあたしたちの税金、数千億円を戦争の資金として、ロシアがウクライナから強奪した土地なのです。
そんな流れから、あたしは、今回のパレスチナのガザ地区のハマスとイスラエルとの大規模な衝突を、西側諸国に属する日本のマスコミがほとんど報じない、パレスチナ側からの視点で伝えたいと思いました。そして、両方の立場からの事実を理解してもらった上で、その問題点を考えてほしいと思いました。
まず、今回の衝突のキッカケを日本の報道レベルで触れると、パレスチナのガザ地区のイスラム系武装勢力、ハマスによる大規模攻撃によって、イスラエルに数百人の犠牲者が出て、イスラエル軍が大規模空爆で報復したことから戦争状態に突入しました。
これに対して、西側諸国は次々とイスラエルへの支援を発表し、日本の岸田文雄首相も「ハマスへの批判」を発表しました。
アメリカは最新鋭の空母を現地へ展開し、イスラエルの援護に余念がありません。
そして、日本のマスコミはと言えば、「パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム系武装勢力のハマスは…」などと報じまくっています。
こんな国内報道だけを見聞きしていたら、「ハマスというテロリスト組織がイスラエルを攻撃して戦争を始めた」と思ってしまいます。でも、事実は大きく違うのです。
米国をバックにパレスチナ人を排除してきたイスラエル
あまりにも複雑なので大マカにしか説明できませんが、現在、イスラエルやパレスチナがある地中海に面した地域は、もともとは「パレスチナ」という名前の地域でした。北はレバノンとシリア、東はヨルダン、南はエジプトに囲まれた中東のエリアで、真ん中には、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの宗教で聖地とされるエルサレムがあります。
で、2000年もの長きに渡る迫害によって、世界に散らばってしまったユダヤ人たちが、自分たちの国を造るために、ユダヤ教の聖地であるこの地域に集まり、1948年に造ったのが「イスラエル」という国でした。でも、この地には、もともと約70万人のパレスチナ人が住んでいたのです。
世界から集まって来たユダヤ人たちが「イスラエル」という国を造ったことで、それまでこの地域に住んでいたパレスチナ人たちは、ヨルダン川西岸とガザ地区という2カ所に追いやられ、イスラエルの占領下に置かれてしまったのです。つまり、自分たちの奪われた土地を取り戻そうと戦っているのがパレスチナであり、アメリカを後ろ盾にしてパレスチナ人の排除を続けて来たのがイスラエルなのです。
でもこれは、そんな単純な話ではありません。
そもそも、この地域は、2000年ほど遡ると、もともとはユダヤ人の暮らす土地だったのです。
それが迫害や戦争によって追われてしまったのですから、ユダヤ人にしてみれば、自分たちの土地に戻って来ただけであり、そこに住んでいたパレスチナ人は、留守中に無断で自分の家に上がり込んでいた不届き者ということになるわけです。
その上、同じパレスチナの中でもハマスとファタハの勢力争いがあったり、パレスチナ人の地域であるヨルダン川西岸もユダヤ人の入植地になったりと、長年に渡る様々なアレやコレやが複雑に絡み合い、もはや単純に白黒をつけられない状況になっているのです。
日本のマスコミが「イスラム系武装勢力」と呼び、まるでイラクのISILなどと同等に扱っているハマスにしても、もともとは2006年1月のパレスチナ選挙で、市民から選ばれて政権を獲得した正式な政府だったのです。
アメリカをバックにつけ、圧倒的な物量作戦で無差別空爆を繰り返し、子どもや女性やお年寄りたちを数えきれないほど虐殺して来たネタニヤフ首相率いるイスラエル軍に対して、自分たちの命を守るためには武装系であるハマスに統治してもらうしかないと、ガザ地区の人たちが選択したのです。
しかし、今のロシアとウクライナを見れば分かるように、武力に対して武力で対抗しても状況が好転することはありません。
ちなみに、ハマスがガザ地区を統治してから、イスラエルとの大規模な戦闘は、2006年、2008年、2014年の3回発生していますが、その時の両国の死者数を見てください。
【2006年】 【2008年】 【2014年】
パレスチナの死者 409人
1,330人 2,143人
イスラエルの死者 7人 13人 72人
これ、どう思いますか?
イスラエルはアメリカをバックにつけた物量作戦で、最新鋭のミサイルをガザ地区へジャンジャン撃ち込むことができますが、資金も乏しくインフラまで断たれてしまっているガザ地区は、やっとのことでイスラエルに届く程度のロケット弾を単発で発射することしかできなかったのです。
ハマスが10年かけて準備してきた「アクサーの大洪水作戦」
でも、このままじゃジリ貧で、近い将来、パレスチナ人はイスラエル軍に殲滅されてしまいます。
そこでハマスは「最後の聖戦」の準備を始めました。約10年を掛けて、水面下でコツコツをロケット弾を増やし、1,000人規模の軍隊を訓練し、徹底的な情報収集で綿密な計画を練り、総攻撃の準備をして来たのです。
そして10月7日、ハマスはイスラエルに対して、陸、海、空の一斉攻撃、「アクサーの大洪水作戦」を決行したのです。
「アクサー」とは、聖地エルサレムある「アクサー・モスク」のことです。
パレスチナのハマスから見れば、イスラエルは自分たちパレスチナ人の住んでいた土地を略奪し、資源を略奪し、同胞たちを虐殺し続ける凶悪な侵略者です。パレスチナ人に与えられたヨルダン川西岸地区も、ユダヤ人の入植地とされ、入植したユダヤ人たちが武装して、日常的にパレスチナ人の集落を襲撃し、略奪行為を繰り返して来ました。その上、入植したユダヤ人たちは、パレスチナ人たちが大切にしている「アクサー・モスク」に侵入して破壊行動を行なうなど、常にパレスチナ人を挑発して来ました。
何の罪もないパレスチナ人の少年が、ユダヤ人の入植者やイスラエル軍の兵士に、何かの余興で射殺されたことも一度や二度ではありません。長年に渡るパレスチナ人たちの怒りのマグマは、すでに大噴火する直前まで燃えたぎっていたのです。
そして、10月7日が訪れたのです。
ここに書いたことは、アメリカの飼犬の自民党政権に牛耳られている日本の御用マスコミの報道とは違い、常に中立なアルジャジーラなどでも報じられている「世界標準」の事実です。
先ほどの両国の死者数の比較を見れば分かるように、これまで一方的にパレスチナの人々を虐殺し続けて来たイスラエルが、初めて自分たちが数多く殺されたからと、急に大騒ぎを始めたのが今回の衝突なのです。
どうか皆さん、「西側諸国」というフィルターの掛かった日本の偏向報道だけを鵜呑みにせず、逆側からの報道にも目を通した上で、自分の判断で現実をイメージしてください。そして、問題の本質がどこにあるのか、自分の脳みそで考えてほしいと思います。
情報も判断も「右へ倣え」では、何も解決しないどころか、安倍晋三のような恥も外聞もない歴史捏造主義者になってしまうだけですから。
(2023年10月11日号より一部抜粋・文中敬称略)
本邦の報道や分析は、ここで致命的な失態を犯した。カッサーム部隊は今般の攻勢を「アクサーの大洪水」と命名した。
しかし、どういうわけか、本邦の報道機関、記者、専門家の大方は、これを「アクサーの嵐」と訳してしまった。
語学や歴史の講義のお話なのだが、カッサーム部隊が用いた「大洪水」という単語は、ムスリムにとって神聖不可侵(なはずの)コーランでアッラーがエジプトのファラオに力を示したり、ノアの箱舟の挿話で発生させたりする天災、つまり「大洪水」としか訳しようのない単語だ。今やほんのちょっと手間をかければ、それがコーランに出てくる由緒正しい表現であることはすぐわかる。
その手間を惜しんだ時点で、誰も事態をちゃんと理解する意志と能力を欠いていた、ということだ。
では、「アクサーの大洪水」攻勢はハマースの何の利益になるの?
今般の事態の最大の問いは、自殺的にも見える攻勢になぜハマスが打って出たかについて誰も上手に説明できない点だ。
確かに、ハマスはイランから様々な支援を受けているが、だからと言って同派がイランの指令を受けて動くとか、イランと一蓮托生の道を選ぶとかということは断じてない。イランにとっても同様で、ハマスの振る舞いを口実にイスラエルと全面戦争する気なんてみじんもない。
また、ハマスはあくまで現世で活動する政治運動であり、イスラムやアラブ民族主義やパレスチナ解放のような信条に基づいて現世的利益を度外視してイスラエルに武装闘争を挑む組織でも断じてない。
ここでは、今般の攻勢でハマスが期待できる政治的得点のいくつかを挙げておこう。
一つは、冒頭で挙げたように、アクサー・モスクやパレスチナへの侵害や、それが国際的に「なかったこと」にされている風潮に堪えがたい危機感を覚えたことだろう。
もう一つは、ハマスとPA(パレスチナ自治政府)との権益や威信の争奪だ。
オスロ合意が破綻し、「二国家解決」が机上の空論に過ぎなくなった現在、ハマスにとってPAと与党のファタハはその権威や正統性を奪い取る競争相手に過ぎない。実は、過去数か月間、レバノンのアイン・ヒルワ難民キャンプでイスラム過激派らしき者たちと、キャンプを統制するファタハとの戦闘が続いているのだが、これにはファタハの地盤を突き崩そうとするハマスがイスラム過激派をけしかけているとの陰謀論が唱えられている。
さらに一つ挙げるなら、「アクサーの大洪水」攻勢は、過去20年間にムスリムの世論を幻惑し続けてきたイスラム過激派に対し、イスラム共同体への侵略者と闘い、現実的な戦果を上げているのは誰かを示す絶好の好機だということだ。
十字軍・シオニスト(≒アメリカとイスラエル)と闘うと主張しているにも拘らず、近年ろくな戦果を上げられないアル=カーイダにも、パレスチナやエルサレムの問題なんてどーだっていーと公言する「イスラム国」にも、過去数日間にハマス(とパレスチナの抵抗運動諸派)が上げた戦果は、よほど頑張らないと挽回できない大失態だ。
今般の攻勢により、ハマスはアラブ民族やイスラム共同体を代表して侵略者と闘う地位を回復できる。
… 「アクサーの大洪水」攻勢は、このところ「抵抗枢軸」の中で居心地が悪かったハマスの地位を一気に挽回するものだ。
カッサーム部隊のダイフ司令官は攻勢開始を告げる演説で、「レバノン、イラン、イエメン、イラク、シリアのイスラーム抵抗運動に対し、イスラエルに(抵抗運動の)指導者を暗殺したり、資源を収奪したり、イラクやシリアを日常的に爆撃したりする時代が終わったことを思い知らせろ」と扇動した。これは、今般の攻勢を「抵抗枢軸」内での地位回復にかけるハマスの意気込みを反映したものだ。
ハマスにとって望外だったのは、イスラエル政府が同国の「法律」に則ってハマスなりガザ地区なりに「宣戦布告」してくれたことだ。
国内法でも国際法でも、「宣戦布告」は布告する相手に法人格を認め「戦争の始まりと終わり」に際して何かの手続きが必要となる行為だ。
これは、かつて何の法的根拠をもってどこの誰に何をしようとして「宣戦布告」したのかさっぱりわからなかったアメリカによる「テロとの戦い」とは全く違う行為だ。
これまで、イスラエルはハマスの、ハマスはイスラエルの存在を認めず、双方に何か合意や了解があったとしてもそれは第三国や国際機関を通じた間接的なものに過ぎなかった。外交場裏でいろいろな当事者が「見えないふり」してきたハマスが法的な地位を獲得したという意味で、「アクサーの大洪水」攻勢は既に大戦果を上げた。
高齢者は「座っている時間が長い」と認知症になりやすいって本当?
2023.10.13
by 『精神医学論文マガジン』
日本では高齢者の5人に1人はかかると言われている認知症。
もりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、
認知症と座っている時間の関連についての研究結果を紹介しています。
高齢期における座っている時間と認知症との関連
様々な年代における運動量の減少と認知能力低下との関連について指摘されてきました。
今回は、高齢期における座っている時間と(原因によらない)認知症発症との関連を調べた研究をご紹介します。
Sedentary
Behavior and Incident Dementia Among Older Adults
高齢期における座位行動と認知症発症との関連
イギリスの大規模な生体データ(UK Biobank)を元にした研究で、49,841人の高齢者(平均67.19歳、女性54.7%)が対象となりました。
加速度計を用いて、座っていると思われる時間と認知症発症との関連を調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
· 座っている時間の平均は9.27で、座位時間が10時間での認知症発症リスクの目安となるハザード比は1.08倍でした。
· 座っている時間が長いほど、認知症発症のリスクは高くなっていました(座位時間ごとのハザード比は、12時間:1.63倍、15時間:3.21倍)。
· 1000人あたり、年あたりの認知症発症者数は座位時間9.27時間で7.49人、10時間で8.06人、12時間で12.0人、15時間で22.74人となっていました。
要約:『高齢期において座っている時間が長いほど、認知症のリスクは高い可能性がある』
様々な要素の関連がありそうですが、活動性を維持することが、認知症予防の点で重要である可能性が考えられました。
最後までお読みいただき、有り難うございました。 ☚ LINK
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