2023.03.29
by 村上茂久
2月14日に行われた決算発表で、過去最大となる3,729億円の赤字計上を報告した楽天グループ。
モバイル事業が大きく足を引っ張っていると伝えられますが、同社の倒産はあり得るのでしょうか。今回、楽天の状況を事業全体とキャッシュフローの観点から考察しているのは、財務コンサルティング等を行う株式会社ファインディールズ代表取締役で、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授の村上茂久さん。
村上さんは楽天が巨額の赤字となった理由を解説するとともに、今後の経営を左右するポイントについて考察。
モバイルで赤字に陥っている楽天グループ。資金繰りは大丈夫なのか?
2月に発表された楽天グループ株式会社(以下、楽天)の2022年12月期の決算は、過去最大の赤字となる3,729億円の当期純損失となりました。前年度の21年12月期でも1,338億円の純損失と大きな赤字の計上となりましたが、22年12月期はその3倍弱となる赤字の計上です。
この赤字の要因は、すでに多くの報道でなされている通り、携帯事業である楽天モバイルによるものです。
携帯事業(モバイル事業)の赤字はなんと4,928億円と巨額なものです。
世間ではこのモバイル事業の赤字ばかりに注目されがちですが、一方で楽天全体の事業構成はどうなっているのでしょうか。
本稿では、楽天の事業全体とキャッシュフローの観点から2022年12月期の楽天の決算について考察をします。
楽天の3つの事業の柱
楽天の事業といえば、何をイメージしますでしょうか。ネットで買物をする人にとっては、祖業であるEコマースの印象が強いかも知れませんし、投資等をされている方にとっては楽天証券や楽天銀行などの金融事業のイメージが強いでしょう。
楽天の事業は、主にインターネットサービス、フィンテック、そしてモバイルの3つから構成されています。
・・・ 2022年12月期に4年連続で最終赤字を計上した楽天グループでは、今期も携帯電話事業の巨額赤字が計上されることになりそうだ。
携帯子会社の楽天モバイルの赤字の最大要因は四半期ごとに1500億円を超える営業費用だ。
その多くは基地局開設費用やKDDIに支払うローミング費用などネットワーク費用が占めている。
だが、楽天は2023年5月にKDDIローミングの延長と拡充を決めた。
これにより基地局開設費用を抑えて減価償却を減らしていく狙いだが、ローミング費用はかさむ。
結果として楽天は、三木谷浩史会長兼社長が公約していた「今期中の携帯事業の単月黒字化」を断念した。
最も深刻なのは資金繰りだ。携帯事業の設備投資は年間3000億円を超え、前期の「金融事業を除くフリーキャッシュフロー(FCF)」のマイナス幅は7482億円に達した。KDDIローミングの延長・拡充で今期の設備投資は従来計画の3000億円から2000億円に圧縮するが、KDDIへの追加支払いがかさみ、今期も巨額の資金流出は不可避だろう。
さらに、財務諸表を読み解くと、手元に残された現金は一層の厳しさを物語る。
楽天グループの23年3月末の現預金は連結ベースで4兆5042億円。
だが、この数値は傘下の楽天銀行の現預金が大半で、実態を表すのは、楽天市場や楽天モバイルの資金を一括管理する楽天グループ単体の現預金だ。それによると、現預金残高はわずか1175億円にとどまる。さらに、楽天を追い込むのは今後5年で1兆2000億円を超える社債償還だ。このままでは、一段の資金調達が必要になるのは間違いない。
※ メール・BLOG の転送厳禁です!! よろしくお願いします。
コメントをお書きください