2023年04月05日更新
[斎藤健二,ITmedia]
国内におけるAIの権威である東京大学の松尾豊教授は、ChatGPTをどう見ているのか?
4月4日に開催されたAIチャットボットなどを手掛けるPKSHA Technologyのイベントで、同社の上野山勝也社長と対談し、ChatGPTをどう捉えるかについて話した。
ChatGPTは、一時的なトレンドか技術的転換点か
松尾氏 一時的なトレンドではない。使うと分かるが相当学習している。
やっている事自体は、次の単語を予測して表示しているだけだが、その過程で、相当複雑な概念も学習してしまっている。
これがいろいろな形で世の中に広がっていくのは間違いない。
ChatGPTは、プロンプトエンジニアリングによって、新しいものを生み出している。
確かに学習しているのはネット上のデータだが、「新しい話を書いてください」と指示したとき、類型化と混ぜ合わせをやっている。 そして、だいたいの創造性は類型化と混ぜ合わせだと考えれば、(ChatGPTは)創造的なことをやっていると考えていていい。
AI研究者から見てChatGPTは?
松尾氏 騒然としている。いろいろな意味で、変わり目な感じがしている。
例えば、言語処理学会では「これで言語の研究はなくなるのか?」ということが言われたりしている。
アカデミアでできる研究が、これから先限られているのかもしれない。
言語処理については、これまで問題を切り分けて、形態素解析とか構文解析、知識処理、推論とかで対応してきたが、
それらがほぼ同じ(大規模言語モデル、LLMという)アルゴリズムで一気に解けてしまうということだし、その範囲が言語処理を超えて、知識や教育、哲学などいろいろなものを含み始めている。普遍的な知のあり方に近づいている。
ChatGPTの活用を事業成長につなげるには?
松尾氏 今までにない、変なものが生まれている感があって、プログラミングの概念とプロンプトエンジニアリングの間で、
面白いことが起きている。例えば、ChatGPTに「あなたはスポーツジムの受付を担当するアシスタントです。
顧客と話してどのプランがいいか案内してください」とプロンプトを入れる。
そのとき、過去に申し込みした人かどうかを確認するときには、顧客DBにChatGPTがクエリ(問い合わせ)を投げなくて
はならない。
ChatGPTでは、これがすべて(日本語の)プロンプトで書かれている。こんな変なプログラミングはありますか。
ただ、法律とか規約とか手順書が機能するのも、“人間というLLM”がうまいようにやっているともいえる。
そう考えると、いままでのプログラミングのほうが変わったもので、LLM向けのプロンプトのほうが、人間社会では
これまで使われてきたともいえる。
日本もLLMを作ったほうがいいのか?
松尾氏 日本もLLMを作ったほうがいい。何も作らないというのはあり得ない。
LLM開発にはいろいろなレイヤーがあって、LLMを作れる開発者、研究者を育てる必要がある。
特化型のLLMとかローカル型のLLMがどういうアーキテクチャになるかというのもあり、少なくとも国内でやらないと
いけない部分はある。国産検索エンジンの開発をやっていた1998年に時間が巻き戻ったとして、「結局、世界を取れなかった
んだからやらなくてよい」とはならなくて、むしろもっとちゃんとやっておくべきだったとなるだろう。
新しい時代だからこそ、重要なテクノロジーや基盤技術はまず自分たちでもやるということだと思う。
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