2022.11.10
by 上久保誠人
11月9日、またも日本海に向け弾道ミサイルと見られるもの発射した北朝鮮。
今年に入り実に32回もの発射実験を繰り返し、近く5年ぶり7回目となる核実験を強行することが濃厚とされますが、何が北朝鮮をここまで増長させてしまったのでしょうか。その大きな責任は日本にあるとするのは、立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。 上久保さんは今回、そう判断せざるを得ない根拠と、日本が本気で核武装論を検討すべき理由を解説。
(一部、抜粋して掲載)
北朝鮮の核開発・ミサイル開発は、金正恩氏の父・正日氏の時代に始められた。
金正日氏は、死去する2ヵ月前に「遺訓」を残している。
「核と長距離ミサイル、生物化学兵器を絶えず発展させ十分に保有することが朝鮮半島の平和を維持する道であることを肝に銘じよ」
「米国との心理的対決で必ず勝たなければならない。合法的な核保有国に堂々と上ることにより朝鮮半島で米国の影響力を低下させるべき」
というものである。金正日氏の念頭にあったのは、「イラク戦争」だとされる。
イラクは大量破壊兵器の生産をやめた。しかし、フセイン元大統領は米国に捕えられ、処刑されてしまった。
金正日氏は、大量破壊兵器の開発をやめれば、いずれ北朝鮮も同じように、米国に潰される。だから、体制維持のためには、絶対に核兵器を持たねばならないと考えていたのだ。後継者の金正恩氏も、父の遺訓に従って、「北朝鮮を核保有国と国際社会に認めさせること」「米国に体制維持を保障されること」を国家目標として掲げてきた。
・・・ 北朝鮮は、これら実験のたびに着実に技術を向上させて、ミサイルの射程距離を伸ばしてきた。
そして、ついに 米本土に届くICBMを完成させた。
・・・ 北朝鮮は実験のたびに着実に技術を向上させて、ミサイルの射程距離を伸ばし、一度の発射数を増加させてきた。 重要なことは、北朝鮮のミサイルは、ほとんど日本向けに発射され、日本上空を通過することもあったということだ。 北朝鮮は、日本に対して、ミサイルを撃ち放題だったのだ。
なぜ、日本ばかりにミサイルが発射されてきたのか。それは、日本近海以外にミサイルを落下させることができる場所がなかったからだ。日本は核保有国でない上に、憲法上「専守防衛」という制約がある。
「先制攻撃」も「報復攻撃」も認められていない。北朝鮮からすれば、何も恐れる必要がなく、日本に向けてミサイル発射を繰り返すことができた。
その結果、北朝鮮はICBMの開発にまで至ったし、多数のミサイルを一度に発射できる能力を持ったということだ。
言い換えれば、日本が北朝鮮を先制攻撃、報復攻撃できたならば、北朝鮮はミサイルを行う実験場がなくなり、ミサイル開発を続けられなかったはずだということだ。
そして、日本が北朝鮮を巡る外交戦でも「蚊帳の外」になりがちな本質的な理由がここにある。
いくら北朝鮮への「圧力」を訴えても、実は日本こそが「穴」となっていて、北朝鮮のミサイル開発を許しているということを、米国・中国・ロシア・韓国に見透かされているからではないだろうか。
防衛省は、来年度予算案の概算要求で敵基地攻撃能力にも使える射程が長い「スタンド・オフ・ミサイル」の量産などを既に盛り込んでいる。その方向性は間違っていないが、十分ではないのではないか。私は、日本の「核武装」も真剣に検討する段階に来ているように思う。
日本が、北朝鮮問題における現在の「蚊帳の外」状態を打開するには、「核武装」を交渉カードとして切る必要があるように思うからだ。もちろん、北朝鮮のみならず、米国、中国、ロシア、韓国が一斉に日本を非難するだろう。
中国は、日本製品の禁輸など、経済制裁をチラつかせるかもしれない。
しかし、日本が核武装に不退転の姿勢を見せれば、これらの国は、口先だけで「非核化」を言うだけではなく、真剣に北朝鮮の核廃棄に動き出すはずだ。
もっと踏み込んで、金正恩氏の亡命や、金体制を崩壊させるように裏で動き出すかもしれない。
これまで、中国、ロシア、韓国は、日本が先制攻撃も報復攻撃も何もできないと甘く考えてきた。
日本を、過去に悪いことをした「ならず者国家」扱いして、言いたい放題、やりたい放題だったではないか。
だが、一方で日本の「いつでも核を持てる潜在能力」には恐れを抱いてきた。
圧倒的な経済力と高い技術力を持つ日本の核武装は、これらの国が最も回避したい「最悪のシナリオ」なのだ。
日本の核武装は「極論」であり、現実的ではないかもしれない。
だが、その検討を行う姿勢をみせるだけでも、日本は生き馬の目を抜く国際情勢の中で、強い「交渉力」を持つことができる。日本は生き残るために、その交渉力を持つべき時なのではないだろうか。
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