AIはすべてを変える
[著者プロフィル]Martin Ford/フューチャリスト。
米シリコンバレーを拠点とするソフトウェア開発会社創業者。人工知能が社会に及ぼす影響に関するTED Talkは300万回以上閲覧されている。 著書にベストセラーとなった『ロボットの脅威』。
タイトルと第1章「迫りくる創造的破壊(ディスラプション)」からは、AI(人工知能)が人類にとっていかに危険であるかを示す書という印象を受ける。
事実、そのような記述もあるのだが、むしろ著者は、かなりの紙幅を割いて、現在のAIが直面する限界を解説する。
ディープラーニングが進化したといっても、いわゆるAGI(汎用人工知能 , Artificial General Intelligence)実現へのハードルはかなり高い。
AGIと現在のAIを比べると、後者が対応できる知識分野は極めて限定的なのだ。例えば、AIの囲碁や将棋のソフトウェアが、プロ棋士に完勝できるようになっても、分野が異なるクロスワードパズルでは、それがどんなに簡単な内容であっても、解答することができない。
他方、AGIとは、人間のように幅広い課題に対応する能力を持つもので、人間よりも素早く深い解答を出すことが期待されている。AGIこそ多くの人々が想像している本来のAIだろう。
だとすれば、AGI以前のAIが自らの意思で人類に反逆し、地球を征服するなどということは起こりえない。では、AGIの実現は可能なのか、可能ならばいつなのだろうか。
「変える」とすればAGI ただし、実現はかなり先
著者は23人の研究者にAGIの実現時期に関するアンケートを実施している。
実現する年として挙げられた最も早い年は2029年、最も遅い年は2200年と、回答はかなりの長期間に分散している。評者が23人の回答結果を分析したところ、中央値2093年、平均値2099年となった。
AGIの実現は、まだ先と考えている研究者が多いことがわかる。
「創造的破壊」がすぐに生じることはなさそうだが、変化は起きつつあり、AGI実現以前に一定数の職業がAIに置き換わることは間違いないだろう。著者は人間に残される仕事として、次の3種類に言及している。
①真に創造的なタイプの仕事、②他人と複雑な人間関係を作ることが必要な仕事、③高い機動性、器用さ、問題解決スキルが求められる仕事、である。とくに②と③の例として看護師やコンサルタント、コネの多い弁護士が挙げられている点が興味深い。
どうやら、あらかじめ形式化できない、文字どおり人間臭い仕事が、AIも最後まで苦手なのかもしれない。
本書は、AIの進展により、近い将来ロボットが人間を支配するのではないかといった不安を覚える読者にとって、“精神安定剤”となる1冊だ。
< 評者・スクウェイブ代表 黒須 豊 >
コスモスを眺めつつ
コスモスといえば秋に色彩を添えてくれる花だが、宇宙を指す言葉でもある。どちらも「秩序」「調和」を意味するギリシャ語がもとになっている。花のコスモスは、整然と並ぶ花びらの美しさからその名がついたという。
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