AIを過大評価して「何でもやってくれるんじゃないか」と期待したり、反対に「仕事がなくなる」とおびえる風潮、ありますね。AIがどうやって動いているかを知ろうとしないで、表面的にAIを理解しようとする人がとても多いのがよくないと思っています。まるで人のような知能を持った機械が処理しているように勘違いされています。
AIがあたかも人間と同じように考えるかのように書いている雑誌や記事も多いですね。
──えっ、違うんですか?
AIをあまりわかっていない人が解説記事を書き、それを読んで中途半端な受け売りで連鎖的に記事が書かれていたりするために、世の中が間違った期待や、不要な恐れだらけになっている、というのが今の状況です。
実際のところ、今のAIができることって、ざっくり 3~5つしかないんですよ。
・・・
ビッグデータといわれますが、Webにはたくさんのデータがあります。
誰もが毎日、文章や画像をアップロードしているわけです。そうすると、AIが学習するためのデータには事欠かなくなったわけです。
人間がハンドメイドでルールを作るのが難しいなら、いっそのこと、入力と出力のデータをとにかく大量に持ってきてAIに覚えさせる。
そうすればAIは学習して、翻訳をしたり画像認識をしたりしてくれる。
1次や2次のAIに比べると、人がどう考えているかをまねするというよりも、入出力の対応を表面的にまねするだけの単純な仕組みですね。
──Webの登場と、技術の発展のおかげで今のAIが実現したんですね。でも、今までもなかなかうまくいかなかったじゃないですか? 第3次はもうそんな心配はないんですか?
表面的にしかなぞっていないので、問題は大ありです。
まず、1次で行っていたような試行錯誤は行っておらず情報処理が一方通行なんです。入力と出力を大量に覚えさせているわけですから、入力から出力を出すことしかできない。第1次の段階では盤面から最善手を探すため、いろいろな手を試行錯誤していましたよね。
一番いいのは、第1次、第2次、第3次すべての特徴を統合するようなAIですが、今の段階では「どれか」を選ぶことしかできません。
● AI(人工知能)の分類方法
AI(人工知能)には、いくつかの違う方法論があったり、そもそも、AI(人工知能)と呼ぶべきかどうかの線引きが難しいものがありますが、ここでは「特化型・汎用型」と「弱いAI・強いAI」という分類方法について説明します。
● 特化型と汎用型
AI(人工知能)の区分の仕方に、「特化型」と「汎用型」という分類方法があります。
特化型とは特定の専門分野でのみ能力を発揮できるAI(人工知能)のことです。
囲碁・将棋・チェスの対戦ができるAI(人工知能)や、法律や医療、故障診断などの専門分野に特化したものです。
一世代前のエキスパートシステムも特化型のAIと言えますが、当時はルールを人間が教える(記述する)必要があったので、ディープラーニングを活用した今流行りのものとは使っている技術が違うものです。
一方、汎用型とは、人間のように幅広い対象に対して推論等が行えるものです。
SF映画に出てくる人型のアンドロイドやアニメのドラえもんなどは、汎用的なAI(人工知能)を搭載したロボットだと言えます。
その人間並みにどんなことにでも対応できるAI(人工知能)の実現には、AI(人工知能)自らが学習して進化する能力が必要だと考えられます。全てを人間がコード化してAI(人工知能)に教えることには限界があるからです。
● 弱いAI・強いAIとは
汎用型・特化型とは違うものとして、弱いAI・強いAIという分類方法があります。
一世代前の人間がルールを記述するルールベースの推論(人工知能)は、弱いAIです。法律や医療など、人間が教えたこと以上のことができませんので、人間を超えることができません。囲碁の対戦ソフトも、子供の遊び相手程度の実力であれば、特化型の「弱いAI」です。
逆に、強いAIとは、人類よりも優れた推論能力を持つAI(人工知能)のことです。
強いAIのベースには、ディープラーニングの技術があります。そして、学習のための多くの事例が必要です。
加えて、アルファ碁のように現代の世界最高速のスーパーコンピューターを活用する場合があります。ただし、コンピューターの演算能力は時間の経過と伴に進化していきますので、いつかはパソコンでもアルファ碁並みの演算処理ができる時代がやってくるはずです。
そして裁判の類似事例を見つけ出す、レントゲン写真から病巣を見つけ出すなどの特化型のAIでは、既に人間の能力を超えている AI が出現しています。ただし、弱いAIであっても、弱いAIが全く役に立たないというわけでもありませんし、弱いAIにもビジネスチャンスが眠っているかもしれません。
ちなみに、汎用型のAIは、自ら学習する能力を身につけているはずなので、最初は「弱いAI」であっても、いずれ「強いAI」へと育っていくはずです。コンピューターの演算処理能力に問題がなければという条件が付きますが。
そして、そのような「汎用型のAI」が実現されるには何らかのブレークスルーが必要であり、現時点ではまだ実現できるかどうかはわからないのではないでしょうか。
以下、「AI 用語事典」から・・・。
汎用人工知能(AGI)は、特化型AIに対し「人間と同様の感性や思考回路をもつ」人工知能のことを指す。
弱いAI、強いAIという定義を提唱したアメリカの哲学者ジョン・サールが言うところの「強いAI」である。
AGI(汎用人工知能、強いAI)の対となる存在はNarrow AI(特化型人工知能、弱いAI)であり、Narrow AIは逆に現在既に開発されている「特定の事柄に秀でた人工知能」を指す。
☞ 2つの違いは以下の通りである。
AGI……人間と同じように感じ、考える力をもつ。
例えば楽しくて笑う、悲しくて泣くなどの感情を理解することが可能で、それを模倣するだけでなく自分なりに思考した上で異なる行動をとることもできる。並みの人間以上の能力を持ちながら、人間の心に寄り添える人工知能なのである。
映画やアニメに登場するロボットやアンドロイドなどが分かりやすい例だが、人の感情を理解できない、という設定の場合はこちらに当てはまらないと言われることも。
Narrow AI……特定の能力に秀でながらも、人間と同じようには振る舞えないAI。
高度な機械学習やディープラーニングによる特定の能力の習得が可能であっても、自ら考える力を持たない人工知能は全てこちらに分類される。現状は全てのAIがこの「弱いAI」に分類される。
2016年にプロ棋士に勝利し話題となった囲碁AI「アルファ碁」は、人間を凌駕したことがクローズアップされたが、特定の能力が人間を上回ったに過ぎず、「弱いAI」だ。コミュニケーションロボットとして評価が高い「Pepper(ペッパー)」は、見た目こそ人間に近いが、感情理解や模倣など、技術的にはAGIには遠く及ばず、特化型の人工知能に過ぎない。
AGIについては研究が続けられているが、不可能とする専門家もおり、その実現がいつになるかは誰にも分からない。
もしも、人工知能が意思を持つことになれば、人類と対立する存在となり、規制やコントロールをどうするのかなど、大きな課題に突き当たることも予測される。
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