2022.05.22
by 『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』
核ミサイルが大きくクローズアップされる、金正恩政権が各国にもたらす脅威。
しかし日本にとっての最大の北朝鮮リスクは、それら「兵器」の類ではないようです。
ジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、我が国に対する北朝鮮による一番の脅威についての考察を展開。さらに新しい冷戦構造において、日本がシミュレーションしておくべき局面を提示しています。
* ウクライナ情勢を見て思う「我が国は生きのこれるのか?」日本のリスク・北朝鮮編
今まで日本国内における日本の置かれた状況を見てきました。
日本は、「平和ボケ」をしていてとても戦えるような状態ではないということが言えます。
一つの例を挙げてみましょう。
今回ウクライナに「人道支援」という名目で食料などを支援するということを、日本の自衛隊機が行うという状況で、ロシアに近しい立場を表明しているインドが、自衛隊機の着陸を許可しなかったということが起きました。
日本は「人道支援」といえば、何でも通ると思っています。
しかし、実際にはそのような感覚にはならない状況です。
人道支援だから許されるという感覚は、日本の「平和ボケ」の感覚でしかありません。
食料品などは、当然、兵も食べることができますし、また、子供が育って戦いに参加する可能性もあるのです。
そのように考えた場合、今回の内容で「ウクライナ」を支援するということは、それが人道目的であったとしても、ロシアから見れば敵対行為になるでしょう。
敵味方関係なく怪我人の手当をする「赤十字」や「国境なき医師団」のような存在とは全く異なります。
また、難民キャンプに対して支援をするということとも全く意味が異なるのです。
当然、その内容は「立場」によって解釈は全く異なります。
ロシアは、当然「敵国」に対する支援と考えるでしょう。
しかし、「人道支援だからそのようなことは関係ない」「ロシアも理解してくれるはず」などというような感覚が捨てきれないのが、現在の日本の「平和ボケ」なのです。
一方、今回知床半島で観光船が行方不明になった事件に関して言えば、海流によって被害者が流されている可能性があります。
これに関してロシアの管理する海域などに入ってしまう可能性もあるので、その点に関しては、ロシアは理解しています。
つまり、「本当に人道的な援助」に関しては、ロシアは当然に日本に協力しているということになります。
ある意味で、日本は戦争をしている敵国ではないということになるので、当然に、その内容を認めるということになります。
つまり、「ウクライナへの支援」は、「敵国に対して利益を生む行為」というように見られているということになるのです。
逆に言えば「戦争の当事国に対して、人道支援などということはあり得ない」ということになるのではないでしょうか。
もちろん、私も日本人ですから日本人の考え方はよくわかります。
しかし、立場を変えて考えれば、当然日本の考え方が世界で通用するとは考えられないのです。
そのような例は、過去に人道支援であるからと言って、イラク戦争の中、イラクに出かけて行った日本人などにもあります。
このような「解釈の違い」や「立場の違い」「誤解」などから、当然その行動に関して全く異なる解釈になり、日本人が敵対的であるというように解釈されることも少なくないのです。
このような解釈の違いも本来は「戦争を知っているかどうか」ということにつながるのです。
要するに、戦った経験があり、かつその時に敵国に対してどのような行動をとられたら困るのかということが見えていれば、わかるのです。もちろんそれを理解するために戦争をするなどという愚を犯してはいけません。
しかし、今回のウクライナ侵攻に関しても、日本ではウクライナの立場ばかりを報道しており、ロシアのことはあまり報道していません。
もしも中立、そして戦争に巻き込まれないということであれば、当然に「双方の立場」を理解し、その主張をしっかりと見たうえで自分たちの行動を考えないとならないということになるはずなのです。
どちらか一方の立場で行動を起こし、その上で「人道支援だから問題はない」などというようなことは、世界では通用しないということになります。
そのことがわからないということ自体が「平和ボケ」なのです。
今回のインドでの着陸許可が出ないことなど、すべて予想される話なのですが、事前に政府内でそのようなことが予想されてないこと自体が大きな問題なのではないでしょうか。
さて、そんな日本ですから「人為的」リスクというのは様々な国からのものがあります。
「日本は憲法9条があるから戦争はしない」などととぼけたことを言っていますが、実際に江戸時代の幕末には「鎖国していたのに黒船は入ってきた」わけであり、人道支援であるということを言っていてもその内容をしっかりと見ていなければ意味がないということになってしまうのではないでしょうか。
そのような意味で、日本そのものも大きなリスクを持っているということになります。
もっと言えば、「日本が敵国として思われている」可能性も少なくないということになるのです。
そのように思っている国の中で、特に日本と地理的に近しい順番に「中国」「韓国」「北朝鮮」「ロシア」「中東からの資源が届かないリスク」そして「日本国内のリスク」というように見てゆきたいと思います。
その上で、最後は日本の防衛をしっかりと考えてみようと思うのです。
今回は、北朝鮮からのリスクです。
もうすでにご存じと思いますので、北朝鮮という政府(国家とは言いにくいので)の説明は省きます。
必要な場合は、その都度行うことにしましょう。
さて、まず北朝鮮のリスクとして言えるのは「誰が政治を行っているのか」ということになります。
そもそも、北朝鮮と日本の間には正式な国交はありません。
一部、マスコミやあるいは暴力団組織などが接しているというような噂はありますが、それでも個人的なつながりとして存在しているだけで、国家間の国交はないのです。
さて、基本的に普段から貿易をしているわけでも何でもありませんが、この国交がないということは、何か国家間に問題があった時に、その交渉ができないということになります。
そもそも北朝鮮と韓国は現在も「戦争中(休戦中であって終戦していない)」状況であり、その韓国と国交を結ぶことによって、上記ロシアとインドの時のように、日本も敵国と考えられる可能性があるということになります。
その時に交渉の窓口もないということになるのです。
北朝鮮のトップは金正恩総書記であるとされていますが、本当にそうなのか、あるは、労働党の中にそれなりの機関があって、その内容を総書記が発表しているだけなのか、全くその内容が見えていないということになるのです。
また、その内容に関して、様々なうわさ話が出てきていますが、どれ一つとして確実な内容はないということになります。
これでは話にならないのです。
そのうえで、第二のリスクとして「北朝鮮のミサイル開発」ということになります。
このことはニュースなどにおいて報道されていますが、そのミサイルは、北朝鮮はすべて「防衛用」ということにしています。
しかし、実際にはどこを狙っているかはわかりません。
日本のことわざにも「攻撃は最善の防御」などという言葉もありますので、その意味で防御という名の攻撃を日本にしてこないとも限らないのです。
しかし、それも国交がないことによって日本は基本的に情報を得ることができないということになるのではないでしょうか。
日本が北朝鮮の情報を得ることができないということになれば、攻撃の兆候なども事前に知ることができませんし、また、その政治的な内容も知ることはできないのです。
もちろん、どの国も様々な機密があるので、その内容を知ることはできないのかもしれません。
しかし、その国の中において雰囲気を見ることで、だいたいのことは見えてきます。
しかし、国交がないということになれば、そのような雰囲気を知ることもできないということになるのです。
そして、その国が核兵器を開発しているということになります。
現在の、推定された北朝鮮の国力であれば、ミサイルがくることはあっても北朝鮮の軍隊が日本に上陸し日本を征服するということは、あまり現実的ではないかもしれません。
では、北朝鮮がロシアや中国と同盟を組んだ場合に、その先制攻撃として北朝鮮のミサイルが使われた場合はどうなるのかというシミュレーションも考えなければならないということになります。
つまり、これからの冷戦構造において、ロシア・中国・北朝鮮というような連合が組まれ、韓国が北朝鮮側についてしまった場合、日本と台湾が孤立するということになります。
そのようなシミュレーションはできているのでしょうか。
ロシアにとっての北朝鮮は、戦略的には二義的な存在であり、ロシアの対外政策における比重は大きくない。
これは、中東問題などに比べて、朝鮮半島問題に対する米国の戦略的関与が限定的であることに起因する。そのため、ロシアの北朝鮮政策は、ロシアの国益に基づいた積極的なものというよりも、米国、中国、韓国など周辺国との関係に規定される側面が強い。
ロシアのウクライナ侵攻で ~中露、北朝鮮との3正面の備えが必要となる
2022/4/1(金) ニッポン放送
国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙氏が4月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。
2022年版の「外交青書」について解説。
・・・
飯田)ロシアとの向き合い方をかなり変えなければならないですね。
今年(2022年)で「国家安全保障戦略」も改定になります。
2013年版だとそこまで明記されてはいませんが、「ロシアとの経済協力を含めて関係をつくることにより、中露が強く組み合うことがないようにする。
日本は中国の方に集中する」というニュアンスだったと思います。ここも変えていかなければなりませんか?
神保)私も同じように解釈していて、いまの国家安保戦略は2013年度バージョンですが、「ロシアとの関係を全体として高めて
いくことは、我が国の安全保障を確保する上で極めて重要」と書かれています。
むしろ協力を推進するパートナーとして位置付けているわけです。
飯田)パートナーとして。
神保)飯田さんがおっしゃられた通り、深読みすると、日本の安全保障戦略の本丸は中国であり、日本はロシア・中国の両方と
二正面で対峙することは難しい。そのため、まずは日露関係を安定化させて、その戦略資源を中国に集中させる。
その結果、ロシアの経済的な利益が中国だけでなく、日本を含めたアジアのさまざまなところに広がれば、ロシアと中国の連携が常にある形ではなく、そこに楔を打ち込めるかも知れない。
それによって、利益を複雑化させることを狙う戦略だったと思います。
飯田)なるほど。
神保)この戦略の効力が(2022年)2月24日に終わったのだと思います。
ですから、ロシアに関する記述はこれから間違いなく大幅に変更されます。
問題はロシアが今後、躊躇なく極東で軍事的な挑発行動を活発化させたり、中露連携が深まって行く懸念があるということです。この流れを止めるのはもはや難しいのですが、日本の安全保障戦略にとっては当然、本丸は中国に変わりないのですが、それに加えてロシアと、核開発をしている北朝鮮の3正面になると思います。
もともと3正面なのですが、今後はより明示的な3正面になっていくと思います。
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