図解で理解する「社会人基礎力」とは?
2021.09.03
「社会人基礎力」と言えば若者が身につけるべき能力とされてきましたが、昨今その対象者が変わってきているようです。
iU情報経営イノベーション専門職大学教授の久米信行さんが、中高年世代こそが社会人基礎力を高めるべき理由を記すとともに、その具体的な方法を図版を用いて解説。
1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目(現相談役)。ICTと英語活用で起業を目指すiU情報経営イノベーション専門職大学教授。多摩大学客員教授。明治大学講師
もともと「社会人基礎力」は、2006年に経済産業省が提唱した比較的新しい考え方です。
その定義は、上図の通り。
つまり「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を指します。
はや十数年も、参加型の授業で大学生と接しているのですが、残念ながら、若者たちの「社会人基礎力」は年々低下しているようにしか思えません。
そこで、日本経済新聞の別冊「新卒採用広告特集」でのインタビューでは、あらためて社会人基礎力を高めようとお話させていただきました。
そのインタビューの際に使わせていただいたのが、こちらの「新社会人基礎力を究めよう」という図解です。
とはいえ、この「社会人基礎力」なるものを、私自身キチンと兼ね備えているのか自問自答すると、少々自信が無くなってきました。
なまじ社会経験を積むと、どうしても過去の成功体験・失敗体験に縛られて「前に踏み出す」のはおっくうになりますし、「考え抜く」こと無しに経験則で乗り切ろうとしがちです。
さらに、気の合う縁者が増えるとなじみの仲間でつるんで新しい「チームで働く」のを避けたりします。
ところが、時代はDX革命進行中。それもコロナ禍で加速されて、これまでの成功体験が通用しない時代になりつつあります。
一方、これからは再生医療などの医療革命で寿命は伸びて人生100年時代がやってくるのです。
半ばゼロリセットして、新しい知恵を取り込み、自分を磨き直さないと、これから何十年もの間、どう生きたらよいかわからなくなりそうです。
そんな危機意識もあってか、経済産業省は、もともと若者向けに提唱していた「社会人基礎力」を「人生100年時代の社会人基礎力」と改めて、むしろ私たち中高年世代向けに発信し直しているのです(もっとも ほとんどの人は知らないと思いますが)。
そこで、2月26日の日経産業新聞Smarttimesの連載コラムは、自戒の念をこめて 「社会人基礎力を磨く」というテーマで書かせていただきました。
しかしながら、どんなにスペースをいただいても、とても前述の「新社会人基礎力を究めよう」の図の中身は説明しきれませんでした。
そこで、じっくりご説明をさせていただきます。
■Step1 前に踏み出す力
「前に踏み出す力」は、拙著では『「すぐやる!」技術』に関わるテーマ。
自分を変える第一歩です。
<ライフワーク志向>
この図で一番大切なのは、赤線で囲まれた目指すべきゴールです。
何のため「前に踏み出す」のかという人生の意義でもあります。
それは「ライフワーク=生涯をかけて実現したい夢」の実現です。
夢があるからこそ、一歩前に踏み出せるのです。
就職・転職(あるいは起業)も、NPOや趣味の活動も、目的ではなく、ご自身の夢の実現のための手段なのです。
たとえ、今は食べていくために働いている現実があっても、転職や起業まではせずに今の会社で勤めあげたいと考えていても、夢はいつでも誰にでも大切です。
そのまま流されるのではなく、もういちど夢を再設定することで、前に踏み出すことができるのです。
その夢は、当初は漠然としていても、たとえちっぽけなことでも、朝令暮改で変更してしまっても構いません。
社会人基礎力が高まると共に、夢はより大きく、より具体的になっていくからです。
生涯かけて実現したい夢を決めたら、期限をつけて具体化するために、夢に向かう一里塚=10年後の自分の仕事ぶりをイメージいたしましょう。
どこで、どんな仕事をしているか、具体的であればあるほど、それを実現するための努力もしやすくなります。
まずは10年後の自分の理想像に近づくために、今すぐ学ぶべきこと、これから身に着けるべきスキルも明確になるのです。
今から3年、あるいは今年1年の学習計画も立てられることでしょう。
この赤枠のライフワーク志向、夢実現の手段としての仕事と、仕事実現のための学習があってこそ、よりよい就職・転職・起業ができるのです。
<就職・転職(起業)>
ここで心がけるべきは、生涯のゴール、夢の実現は、遠い先の話で、時代は変わるということです。
現在人気があるジャンルではなく、10年後20年後に本格化しそうなジャンル、それもニッチで競争が少ないジャンルを選ぶ必要があるのです。
例えば、私が大学卒業をした1980年代は、成績が優秀な学生ほど、都市銀行や大手生損保に就職しましたが、就職した時のままの社名で、すなわち合併なしで生き残れた会社はありませんでした。
逆に、もしも、当時まだ花札メーカーのイメージが強かった任天堂に就職していたら、今頃どうなっていたでしょうか?あるいはマイクロソフトに就職していたら?
当然、こうした新しいジャンルは怪しく見えるので、親や家族の賛成は得られないでしょう。
多くの場合、親は保守的なので、今のところ一番調子がよく人気のある業種や会社を勧めるものです。
しかし、今一番いいということはこれから落ち目になるということ。
だから、私も子供たちには、私が勧めるような会社には行くなと伝えております。
私自身の経験では、わけがわからない、好きでもないようなジャンルに踏み出すのがおすすめです。
なまじ好きなことを仕事にすると、理想と現実のギャップに直面して思うようにいかずストレスがたまることも多いのです。
結婚式までが一番熱く燃えていて成田離婚してしまう恋愛結婚のようなものです。
私の場合、ゲーム嫌いなのにゲーム会社に就職したり、株嫌いなのに証券会社に転職したり、予期せぬ職業につきました。
期待値ゼロで好きでもないジャンルの仕事に臨んだ結果、修羅場続きではありましたが、思いがけず面白いことを見つけたり、もともと好きで詳しい人よりも柔軟で斬新な発想ができたりしました。
そして、30年後の今、そのキャリアがじわじわ効いてきた上、多種多様な人脈ができ助けてくれたので驚いているのです。
仕事選びも、実はお見合い結婚の方が、結果として少しずつお互いの良さがわかって、長持ちするのかもしれません。
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