中国製の最新世界地図2015
2021.07.19
* 欧米の手薄な地域を次々と赤く染める中国
中国は、アメリカや欧州各国、そして日本などと、実際に戦争をすることなく、代わりに政治・経済・外交・情報力と軍事的なプレゼンスを包括的に用いることで、国際社会における支持基盤を拡大しています。
ゆえに、アメリカをはじめ欧州各国は、中国封じ込めのために経済制裁を課すという手段を通じて、中国の拡大を防ごうとしていますが、実際にはあまり中国には効いていないという実情に繋がってしまいます。
私もその傾向がありますが、米中の軍事的な対峙、特にアジア太平洋地域における緊張の高まりにばかり目が行って、「これは戦争へ向けた動きだ」と大騒ぎしがちですが、中国には覚悟と準備はあるようですが、実際には対米戦争は、自身の生存を脅かすようなケース以外では想定していないようです。
代わりに、経済力、ハイテク技術と戦略物資の供給、サイバー能力といった戦略的な経済・情報エリアでの能力を高めて、世界経済における影響力を高めつつ、抑止力として宇宙戦略や武器、特に弾道ミサイルの命中精度の向上、AIの軍事部門への転用、核戦力の充実などのハードコアな戦略も、アジア太平洋地域限定で行っています。
とはいえ、軍事技術についても、着々と能力は向上していますので、2030年代までアメリカなどとの戦争がなければ、どのような姿になるかはわかりませんが。
戦略的には、中国の軍事面でのアジア集中が功を奏しているかもしれません。
オバマ政権以降のアジアシフトは、確かにアジアを舞台にした米中の対峙をエスカレートさせていますが、それが中国にアジアの外での覇権拡大の道を開き、各国の本心は別にして、確実に国際社会における中国票を積み上げていますし、発展に飢える中国国民と国営企業、金融(中国元)とチャイナマネーの行き先を作っているとも見ることが出来ます。
それが各地でチャイナ権益を増やし、軍港や空港、高速道路といった戦略的なインフラ建設を次々とこなす中、中長期的には、中国の軍事・経済・政治・外交・価値観を統合した影響力拡大につながるベースを構築していると言えます。
アメリカとのその仲間たちが、台湾・香港という中国にとって“不可分の権益”での動向に向き、対中圧力を加える中、南シナ海周辺における支持取りのゲームを進めているように見えます。
南シナ海周辺、つまりASEANの国々は、時にはアメリカや欧州、日本のサイドに立ち、中国が強める圧力に抗するために、それらの国々の傘に入り、同時に経済的なつながりも強化しますが、地理的にどうしても隣接する中国の否めない経済力と影響力を上手に使って、自国及び地域の発展のブースターに用いるという周到さを持っています。
以前、中国政府の高官に話を聞いた際、中国は中長期的な世界戦略の進め方をASEANでテストしているのだとか。
軍事的な圧力を増大させて領土的な野心を満たすと同時に、経済的な恩恵を感じさせて、抜けることが出来ない依存体制に組み込んでいくのだとか。
今、その世界戦略が、南シナ海周辺はもちろんのことながら、中東・東アフリカ、そして北アフリカにまで及び、アジアに集中しがちな欧米の手薄なところで次々とオセロのコマをひっくり返すように、勢力圏を赤く染めているように見えます。
つまり、軍事的には押さえ込んでおらず、またその意図もないが、圧倒的な経済力と“サポーターはとことん守る”という姿勢により、国際社会におけるゆるぎない支持基盤を得ていることになります。
もちろん、China wayで行われる様々なプロジェクトや開発案件は、アフリカの国々では不評も買っていますが、中国は政府の支持を握っています。もちろん、孔子学院などを通じて、文化的・思想的な影響力拡大にも勤しんではいますが。
* 世界は真剣に中国との付き合い方および距離感を測らなければならない状況に
そして何よりも、今では経済力で凌駕してしまったかつての超大国ロシアを飲み込もうとしています。
しかし、ロシアはまだ、世界における2大核戦力の一翼を占めています。
これまでの冷戦期も含めた75年間は、核抑止の理念に基づいて、核戦争に発展することがないように様々なやり取りが行われてきました。
しかし、その枠組みにいない中国が日に日に核戦力を含めた総合力を高める中、バイデン大統領のアメリカとプーチン大統領のロシアの間で話し合われるSTART IIの延長が、実際の核戦力および戦略的な戦力のバランス状態を意味しないことは明らかです。
今後、中国を3つ目の柱として、戦略的核兵器・戦力の国際的なバランスの枠組みに入れて、互いに監視しあうシステムを確立しない限り、抑止論(deterrence)は机上の空論になり、今後、結論が予測できないような戦禍に導かれていく危険性をはらみます。
「一つの誤解・誤報が、世界全体を決して戻ることができない状態へ導く」
それをネガティブな意味で可能にする国が、これまでの2か国から3か国に増えた際、その分、相互抑止力とデリケートなコントロール・バランスの維持は限りなく困難な課題になるでしょう。
2021年時点での中国のステータスは、様々な表に出ていないclassified情報も含めて分析すると、まだアメリカと肩を並べるような総合力は持ち合わせていないとみています。
しかし、軍拡に待ったをかけてそのスピードを落とす方向に進むバイデン大統領のアメリカと、豊富なオイルマネーで最新鋭の兵器を開発することをためらわないロシア、そして、国際社会で無視できない勢力になっているが、国内での真の出来事は決して明かさない中国政府が進める軍事的な拡大と近代化を急ピッチで進め、予定していたよりもはるかに早くアメリカと肩を並べる超大国になろうとする習近平の戦略が並立する現状は、このままでは持続不可能な状況へと導かれるような気がしてなりません。
コロナを機に、第2次世界大戦後から続いた旧国際秩序は崩れたとする見方が強くなる中、アフターコロナの時代に築かれ始めている新国際秩序の中心には、良くも悪くも強い中国が存在することになるでしょう。
もちろん、現在の中国政府の政策と戦略が実際には持続可能な、現実的な路線かどうかは、また別の評価が必要になりますが、若干の修正がなされるにせよ、世界はまじめに中国との付き合い方および距離感を測らないといけない状況になるものと考えます。
とはいえ、私個人としては、中国にはどこかまだ“自らが作り出したスピードについていけず、脱線する可能性“を否定できずにいるのですが…。
いろいろとご批判やコメントもあるかと思いますが、ぜひ皆さんのお考えもお聞かせいただければ嬉しいです。
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