次世代開発競争が迫る自動車部品会社の変革
ホンダ系サプライヤー、ジーテクト社長に聞く
岸本 桂司 : 東洋経済 記者
2020年07月30日
ジーテクトの高尾社長は「コロナ禍で思い知らされたことがある」と語った
(写真:ジーテクト)
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の基幹産業である自動車産業も大きく揺さぶっている。
北米や東南アジアなど日本の自動車メーカーが得意とする地域でも生産・販売台数が激減。自動車メーカーの傘下にいる部品メーカー(サプライヤー)も苦境に立たされている。
コロナ後の自動車産業はどう変化していくのか。
ホンダ系列のサプライヤーで、自動車の車体プレス部品(ボディ)を製造するジーテクトの高尾直宏社長に現状と今後の戦略を聞いた。
☞ 現在のリスクは北米とアジア
――2020年度の受注台数は前期比20%減の計画ですが、足元の生産はどの程度まで回復してきましたか。
今期(2021年3月期)の業績見通しでは、第1四半期の生産台数が前年同期比50%減、第2四半期で20%減、第3と第4四半期で5%減という前提だが、第1四半期の実績では世界全体で想定よりやや上振れて進捗している。
中国は今年2~3月に生産停止した巻き返しの増産に入っており、前期比プラスで推移している。
4~6月は調子がよかったが、7月以降も増産が続く計画だ。
一方で(中国の)消費が陰っているという話もあり、その先はまだ見通せない。
――近年の世界の自動車市場は中国など新興国を中心に成長してきましたが、これからは低迷が長期化する可能性があります。
複数のアナリストの分析によれば、世界の新車販売は2020年の19年比20%減がボトムになるが、2021年も10%減と厳しい。2019年の水準に戻ってくるのは2024年ごろだろう。
アジアではタイの需要が徐々に戻ってきているが、インドは感染がひどい状況で非常に不安定だ。
アジアは国々によって状況が大きく異なる。怖いのは北米だ。
――ジーテクトの売上高に占める北米比率は35%と高いです。
そうだ。アメリカは第2波が来ているような状況で、われわれにとって現在のリスクは北米とアジア。
今後の回復に向けて、ここが足かせになりかねない。
――コロナの長期化による需要低迷を見据えた事業資金の手当をどう考えていますか。
4月の段階で(金融機関から)500億円を調達した。これで2020年末まで生産がゼロでも固定費を賄える。
今回のコロナ禍で思い知らされたのは、資金がないと生産が止まった時にどうしようもないということ。
自己資本比率は連結ベースではすでに50%以上あるが、地域によってはその水準に満たない拠点もある。
自己資本比率を上げていくことが当面の課題になる。
――取引がある2次下請けへの支援策は検討していますか。
すでに2次メーカー支援のための資金を確保している。
当社の購買部門で2次メーカーの状況は常に把握しているので、何かあればすぐに支援できるような体制はできている。
ただ、現時点で行き詰まっているような会社はない。
日本国内では生産が徐々に回復してきており、峠は越えたという認識だ。
いちばん苦しいのは4月初旬から5月の連休までの1カ月くらいだった。ただ、コロナの第2波、第3波となるとわからない。
☞ すべて提案できないと振り向いてくれない
――自動車業界ではCASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術の開発競争が激化し、完成車メーカーは投資負担が増しています。サプライヤーと完成車メーカーとの関係は今後どう変わっていくのでしょうか。
完成車メーカーの投資はCASEに大きく傾いている。
そうすると、従来は完成車メーカーがやっていた車体開発は、サプライヤーでできる会社があるならそこに任せていくことになる。まさに欧米式の分業だ。そのためにはわれわれが車体1台分の開発をできる能力を持たないといけない。
日系の完成車メーカーでは、車体プレス部品のうち、ジーテクトはこの部品、別のサプライヤーはこの部品と割り振りが決まっている。
一方、ヨーロッパやアメリカの完成車メーカーにとっては、「その部品しかできないの?」というふうになる。
日本のやり方では世界に太刀打ちできない。
アッパーボディもアンダーボディもすべて提案できないと相手は振り向いてくれない。それをやりたい。
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