2020.07.28
活気がある職場、活気がある組織とはどういうものでしょうか。
自分の意見を自由に言える、自らの考えで積極的に行動できるなどが思いつきますが、そのような活気は事業が盛り上がるには欠かせないといいます。
では、人を活気づかせるには何をすれば良いのでしょうか。
☞ 松下さんと本田さんのやる気づくり
人はどのようにすれば“活気づく”のか、これを良く知る者が名指揮者になるについて、まさに符合する二人の経営者があげられます。誰もがよく知る松下幸之助さんともう一人は本田宗一郎さんです。
二人とも非常に聡明で、性格は思索型と直観型と異なるようですが、物事の本質を考え抜く情熱に関しては相通ずるものがあります。
この二人の成功には共通する3つの要因があります。
一つは戦略眼、おもしろいことに二人が目指した事業は五感を通して直感したもので、松下さんは横を通り過ぎた電車の風圧で、本田さんは村に初めて来た自動車の排気ガスの臭いに魅了されて時代を感じました。
「時代が醸し出す新奇の感覚」を実感しての事業選択でした。
“戦略”とは、その時代に先駆ける欲求を取り込むことです。
二つ目は、今回取り上げている「人をしていかに“活気づく”ようにするか」で、これについては二人の性格が反映されているようです。
本田さんの場合は藤沢武夫さんというパートナーがいてのことで少し事情が違うのですが、そのあり方については趣を異にします。
三つ目の要因については、両者ともに並外れた情熱があったことです。
話を二つ目の「人をしていかに“活気づく”ようにするか」についてを松下さんの、本田さんの核心をそれぞれ見て行くのですが、それらの核心は、企業の“強み”形成のための必須の要件です。
本田さんのあり様はソニーの井深さんと同じもので、松下さんのあり様は京セラの稲盛さんが継承しており、マネジメントの基本です。
松下さんは「経営の“コツ”ここなりと気づいた価値は百万両」ということ言っているのですが、その“コツ”とは、「正義感をもつということは、言い換えれば“錦の御旗”をもつということである。人間は錦の御旗をもてたときに、ほんとうに強い勇気なり力が湧いてくるものだ。それが人を動かす原動力になる」と言います。
昭和7年に、全従業員を一同に集めて自社の真の使命を宣言しました。
「水道の水の如く、物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する事にある。それによって、人生に幸福を齎し、この世に『極楽楽土を建設する』事が出来るのである」と。
ここから、信念に裏付けされた力強くやり通す事業基盤が生まれました。
こんな風に「尊い使命の自覚が足りなかった」「われわれのやっていることが、即その人のなるんだと。そういう“信念”に生きようやなというとね。得意先がすっかり変わってきたわけですね。そうするとあなた、ぐうっとものがよく売れるわけですね」「早く言えば、至極簡単ですね。早く言えば」と言われるのです。
本田さんのケースについて、本田さんの性格は「したいことしかしない」と「物まねはしない」というもので、ちなみにしたいこととは「遊びと機械いじり」でした。また権威が嫌いで、それでいて他人や周囲への配慮を欠かさないというこの性格が、会社の風土(文化)に大きく投影されることになります。
「会社のためにばかり働くな、ということを言っている。…自分のために働くことが絶対条件だ。一生懸命に働いていることが同時に会社にプラスとなり、会社をよくする」と本田さんは言います。
クルマ好きが集まって「ワイワイガヤガヤ、みんなで知恵を出し合って独創的なものをつくりあげて行く」そこで“強み”が生れる。
しかし“クルマが好き”だけでは事業にはならず、企業を芸術作品と考えるロマンチストで策士の藤沢武夫さんが加わって社会に出たのです。本田さんの“強み”を組織や制度に活かし、近代企業に変身させました。
藤沢さんは、本田さんの“天才”を素材にして、実社会をキャンバスにして自身の“思い”を描き切りました。
本田宗一郎さんは、ホンダの「技術と精神(The Power of Dreams)」の基盤で、これに共感して形づくりをしたのは藤沢さんで、だから、技術を最大限に重視するが、ホンダは“マネジメント”においても一本強い筋の通ったバックボーンを持ちます。
たまたまの出会いの中で、共鳴してできたのがホンダという企業です。
最後に少し付け加えますが、本田さんは聡明な人だけれど事業においては作為がなく、技術と道理以外については興味なく、藤沢さんの人格を信頼して成功を勝ち得ました。
松下さんももとより聡明で、必死で会計や技術の専門家を求め、高橋荒太郎や中尾哲二郎という傑出した人材を見つけだして活躍させました。
まとめとして、世にある願望に沿い人材を獲得し抜擢し、最大に能力を発揮出るように「活気づかせる」ことこそが、経営者の基本で最大の役割だと言えます。
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