これまでにないほどの危機に直面している
グレン・S・フクシマ : 米国先端政策研究所(CAP) 上級研究員
2020年06月10日
11月3日の大統領選まであと5カ月を切ったが、アメリカにおける2月以降の状況が、4つの大きなサプライズを生み出している。そして、こうした予想外の展開は、現職のドナルド・トランプ大統領と、対立候補のジョー・バイデン前副大統領のどちらが選挙に勝利するかにかかわらず、2021年1月20日に発足する新政権に4つの重大な課題を突きつけている。
バイデン、崖っぷちからの勝利
1つ目のサプライズは、2月29日に行われたサウスカロライナ州の予備選挙でバイデンが圧勝したことである。
3日のアイオワ党集会、11日のニューハンプシャー予備選、22日のネバダ州の党集会で連敗を喫したバイデンは、まさに崖っぷちの状態にあり、サウスカロライナ州で敗れていたら大統領選から撤退せざるを得ないと見られていた。
しかし、アフリカ系アメリカ人のジム・クライバーン下院議員とアフリカ系アメリカ人有権者の支持のおかげでバイデンは奇跡的なカムバックを果たし、一般投票の49%を獲得して決定的な勝利を収めた。
2つ目のサプライズは、3月3日のスーパーチューズデーまでに、バイデンは複数の重要な州の予備選挙で勝利し、その結果、エイミー・クロブシャー、ピート・ブティジェッジ、マイク・ブルームバーグ、トム・スタイヤー、ベト・オルークなど、民主党におけるかつてのライバルの多くからの支持を得ることに成功したということだ。
予備選挙のこれほど早い段階で、1人の候補者のもとにこうした結束が民主党でできると予測していた者はほとんどいなかった。むしろ観測筋のほとんどは、全国大会(もともと7月13~16日に予定されていた)に向けて党に深い亀裂が生じると予測していたし、「ブローカード・コンベンション」(仲裁集会)の可能性さえ指摘されていたのである。
民主党がこれほど早期にバイデン支持で団結できた1つの理由として、党内の多くが、穏健派の間で戦いを続ければバーニー・サンダースが党の指名を獲得することになるとおそれていたことがある。民主社会主義者を自称するサンダースが民主党候補者になれば、トランプが再選を勝ち取る可能性が高まるだろうと考えられた。
少なくともこれは、リチャード・ニクソン大統領がジョージ・マクガバン上院議員から地滑りで再選を勝ち取った1972年の大統領選や、ロナルド・レーガン大統領がウォルター・モンデール元副大統領から地滑りで再選を勝ち取った1984年の大統領選から、民主党員の多くが得た教訓である。
3つ目のサプライズは、3月下旬でもまだ予想されていなかった、コロナウイルス感染症(COVID-19)による荒廃である。公衆衛生の専門家は、近い将来に致命的なパンデミックがアメリカを襲う可能性があるとして警告していたが、これほど大きな被害をもたらすと予測していた者はほとんどいなかった。
6月初旬の時点で、感染者は約200万人、死者は11万人以上である。4000万人以上の雇用が失われ、失業率が数週間のうちに3.5%から15%近くまでに急上昇させた新型コロナは、第2次世界大戦後のアメリカ最大の危機であり、1930年代の大恐慌以来最大の経済的大惨事である。
4つ目のサプライズは、出来事としては意外ではないが、その影響は十分に予測されていなかった。
5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで、丸腰で手錠をかけられ、警察に拘束されていたアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイドが白人警官によって残忍に殺害された事件は、白人警官による丸腰のアフリカ系アメリカ人男性の殺害が相次いでいることに代表されるアメリカの人種的緊張の中で、最後の一押しとなった。
数日のうちに、抗議やデモは50州すべての600以上の都市や町、ほかの国々にまで広がった。
このようにして、人種的不平等、刑事司法、そして有色人種、とくにアフリカ系アメリカ人に対する警察の暴力の問題が、一夜にしてすぐさま対処が必要な喫緊の問題となったのである。
次期政権を待ち構える難題
大統領選挙で誰が勝利するかにかかわらず、アメリカの次期政権は、おそらくこの1世紀ほどにおける政権が直面したどれよりも困難な、大きな課題に直面することになるはずだ。
次の4つの問題には、時間、注意、資源をとくに集中的に配分しなければならなくなるだろう。
1つ目は、新型コロナによってもたらされた公衆衛生の危機をどう克服するかということである。
そのためには、感染例をゼロにすること、あるいは少なくとも大幅に減らすことが必要であり、ウイルスによる死者をなくすことが必須である。信頼性の高い検査を必要とするすべての人が受けられるようにするためには、資源を投入しなくてはならない。ウイルスの免疫をつけるためのワクチンや、患者の治療や回復に有効な薬剤の開発の迅速化には、政府と民間の協力も必要であろう。
さらに、一部の公衆衛生専門家が秋にアメリカを襲う可能性があると予測している新型コロナの第2波に対し、最大限の予防を見据えた対策を講じる必要もある。
毎年発生しているインフルエンザの流行と重なるようなことがあれば手に負えない事態となる可能性もあり、医師、看護師、病院施設、人工呼吸器、PPE(個人用保護具)などへの事前投資が新たに必要となる。
最後に、今後のパンデミックに対してアメリカがより効果的に対処できるようになるためには政府対応の改革が必要となるだろう。
2つ目の課題は、過去数十年で最悪の失業率となるであろうこの状況から、いかにして経済を立て直すかということである。伝統的小売業のような一部の産業では、新型コロナの第1波によって生じた損失を完全に回復することは困難であり、小売業は新たな形態を生み出す必要があるだろう。
2016年の大統領選挙では、民主党と共和党の双方が巨大なインフラプロジェクトを提案していたが、そこには交通インフラに関するものや、民主党では再生可能なクリーンエネルギーに関するものも含まれていた。
経済を活性化させ、新たな雇用を創出するために、次期政権ではこうした計画の復活や拡大が必要になるのはまず間違いない。
深刻化する格差問題
次期政権における大きな課題の3つ目は、人種間の不平等、刑事司法、有色人種、とくにアフリカ系アメリカ人に対する警察の暴力の問題に対処することである。
国勢調査局によると、アフリカ系アメリカ人の収入は、非ヒスパニック系白人の5分の3程度がやっとというところである。2018年の黒人世帯の平均収入は4万1400ドル(約450万円)で、白人世帯の平均収入は7万600ドル(約770万円)であった。
黒人と白人の貧富の差は、所得格差よりもさらに大きい。
2017年の連邦準備制度理事会によると、アフリカ系アメリカ人の純資産中央値は1万7600ドルで、ヒスパニック系を除く白人の17万1000ドルに対して10分の1に過ぎなかった。
新型コロナは、とくに有色人種に大きな打撃を与えている。
ニューヨークでは、黒人とヒスパニック系の死亡率は白人の2倍であり、シカゴでは黒人の死亡率は5倍にのぼる。
1つの要因として、黒人は白人よりも健康保険への加入率が低いことがある(2018年のデータでは、 無保険者は黒人12.2%に対し白人7.8%)。
こうした人種問題は、トランプ大統領と指名候補者のバイデンとの間で行われる大統領討論会において、ほぼ確実に中心的な問題となるだろう。
次期政権が直面する4つ目の大きな課題は、世界におけるアメリカの役割を再定義することである。トランプが再選されれば、彼は高い確率で「アメリカ第一主義」を継続し、2017年の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱や2020年の世界保健機関(WHO)脱退と同様に、国際協定や国際的機関からさらにアメリカを撤退させる可能性が高い。
バイデンが当選した場合、彼はアメリカの世界に対する関与を回復させ、そして、コロナウイルスとの戦いや、雇用創出に向けたさらなる輸出市場開拓のために、世界各国と協力しようとするだろう。
また、中国の台頭に直面している状況にあって、アメリカの国際競争力を高めるために、国内のインフラ、教育、研究開発、技術力の向上を図ろうとするはずだ。
ノーベル賞受賞物理学者のニールス・ボーアが1971年に皮肉として記したとされる言葉に「“予測”、とりわけ“未来”の“予測”は非常に困難だ」というものがある。
11月のアメリカ大統領選が近づく中、確かにその通りの様相を呈してきた。
コロナウイルス、経済、人種問題、外交問題などのいくつかの変数は、ホワイトハウスだけでなく上院や下院の選挙結果に間違いなく影響を与える。しかし、選挙結果は不確かかもしれないが、来年1月20日からのホワイトハウスの主が誰になろうと、その人物が大変な仕事を背負い込むことになるのは確実である。
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時事通信によると、
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2020.06.09
警察官による黒人男性殺傷事件に抗議する大規模デモに対し、
黒人暴動やコロナなどの問題点があるが、
その上に、5月の米雇用統計は、
ナスダックは、2月19日の最高値9,838ポイントに迫る9,
欧州では、欧州復興基金をドイツのメルケル首相が賛成して、
メルケル首相は、EUの一体感を保持して、
しかし、「倹約4カ国」と呼ばれるオーストリア、オランダ、
15週売り越していた海外投資家が、大量な買いに回り、
それと同時に、1ドル109円台と円安に向かっている。
1次と2次補正予算で60兆円と大幅な財政出動をするが、
FRBの無限大の金融緩和で、日銀が何もしないと円高になるが、
しかし、現在、
そして、平和的なデモを行っていたワシントンのデモ隊に対して、
これに対して、マティス元国防長官が「ドナルド・トランプ氏は、
6月4日は、31年前に天安門事件があった日であり、
トランプ大統領は、「人権」より「法と秩序」を優先したことで、
このような情勢で、政治的な発言を控えていた前・
エスパー米国防長官も多くの米軍幹部から抗議を受けて、
事実、州兵が抗議集会に同調して参加していた州もあるし、
これと同じことが米軍でもおきる可能性が高いのは、
事実、ミリー統合参謀本部議長、マッカーシー陸軍長官、
というように世論が分裂した状態で、軍を使うことは難しい。
軍出動は、ローマ帝国の最後と同じになる。
このため、バイデン候補の支持率が急上昇している。
批判が大きくなり、やっと、トランプ大統領は、
ホワイトハウス周辺の平和的なデモ隊が「強制排除」
逆に、いつも人権問題で米国から批判されてきた中国は、
また、中国は、
米国の対中政策は、言葉上では非難しているが、
国内のデモ制圧や対中関係などで、
ということで、
しかし、バイデン候補の対中政策が誰にも分らない。
もう1つ、心配なのが米国の大統領が変わると、
しかし、同盟国や友好国から信頼されない、
日本は、
日本は、ドイツなどの欧州や英国と緊密に連絡を取り合い、
そして、バイデン候補の対中政策を見て、
中国と米国が「人権」より「秩序優先」
ポストコロナ「日米同盟に見えた大きな課題」
一段強化と依存できない分野の自立が必要だ
2020年06月15日
日米同盟は必要条件だが十分条件ではない(
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、
*日米同盟の新常態を構想する必要がある
地政学的な対峙から地経学的対立へと拡大する米中の争点には、
アメリカは、2017年に公表された「国家安全保障戦略」
まず、軍事力の最も重要な要素である将兵が感染に弱く、
アメリカ軍内部での感染拡大は、
TRの艦内での感染は、
懸念される政軍関係の混迷は、
*下請け企業中心に軍需産業にも深刻な影響
サプライチェーンの海外依存度は、航空機、造船、
トランプ大統領はF-35に関し、「全部アメリカで作るべきだ。
いち早く感染を封じ込めた中国は欧米における感染拡大を自らにと
南シナ海においても、
アメリカ軍も抑止力を維持するため、F-
だがこれらの対応は、
アメリカ空軍はグアムへの爆撃機駐留を取りやめ本土へ撤収済みだ
インド太平洋軍デービッドソン司令官は4月1日、
中国の攻勢は非軍事の分野でも目覚ましい。
とくにコロナ危機に乗じたサイバー攻撃に関しては、
ハッカー集団が狙う対象は、日本を含む多数の国の医療機関・
地経学的な米中対立の下では安保と経済の両立が重要だが、
コロナ危機はパックス・アメリカーナの終焉を早めよう。
しかしそれは、
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