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雑談が「面白い人」「つまらない人」の決定的な差


何を言っても「雑談が続かない人」の共通点

渡辺 龍太 : 放送作家
2020年02月08日

どうすれば雑談をおもしろくすることができるのでしょうか

突然ですが、「雑談のおもしろさ」は何が決め手になるのでしょうか? 

「話の内容」「口のうまさ」……いろいろな意見があると思いますが、放送作家で即興力(インプロ)養成講師としても活躍する渡辺龍太氏によれば、「相手と無理なく楽しく話すことができれば、話の内容や口のうまさに関係なく、会話は盛り上がる」と言います。

雑談の意義を、「価値ある情報のやり取り」だと思っていると、雑談は決して盛り上がりません。

それどころか、面倒なやつと思われてしまうことがあります。
次のやり取りを見てください。

A 「食器洗いって、めんどくさいよね」
B 「だったら、食器洗い機が便利だよ」
A 「え? でもキッチン狭いし、値段も高そうだし、それは無理かな」
B 「最近は小さいのもあるし、数万円で買えるタイプもあるよ」
A 「でも、私の家マンションだから、音がうるさいと困るな」
B 「そんなにうるさくないよ。じゃあ、紙のお皿と割り箸を使えば? これで解決!」
A 「いやいや、お金かかりそうだし、食事しても味気ないじゃん。ゴミも増えるし」
B 「うーん、じゃあAさんにとって、何がよりいいソリューションなんだろうな?」
A 「ソリューション……?」


この場合、AさんとBさんの間には、雑談に対する完全な認識の違いがあります。

Aさんは、単純に「食器洗いがめんどくさいね」という話をして、「そうだね!」とか、「わかる! その気持ち!」と言われて感情を共有し、お互いのキャラクターを認め合いたいのです。
一方、Bさんは「食器洗いがめんどくさい」という問題に対する解決策を示そうとしています。

つまり、この話題に対して、最終的にどうするべきかという「結論」を出そうとしているのです。
確かに、文字通りの意味に捉えればその通りなのですが、Aさんのつれない反応を見るに、「ありがた迷惑」であることは明白です。

一般的に、男性は結論を出そうとする人が多く、ただ共感して、自分というキャラクターの思考パターンを理解し、認めてほしいだけの女性と会話が嚙み合わないなどと言いますが、まさにこの例のパターンといえるでしょう。



*「わかる!」は定番の共感フレーズ

では、こんな場合はどうすればいいのでしょうか。
一番シンプルな方法は「相手の感情を表す言葉に反応する」ことです。
つまり、相手が「嬉しい」「悲しい」「楽しい」「イライラした」といった自分の感情について説明し始めた場合、示された感情に共感するのです。
さらに、そんなときに役立つ魔法のフレーズがあります。それが「わかる!」という言葉です。先ほどの会話例で見てみましょう。
A 「食器洗いって、めんどくさいよね」
B 「ああ、わかる! めんどくさいよね!」
A 「そうそう! 食べ終わった後って、何もしたくないじゃん。だからといって、次の日までシンクに食器を放っておくと、翌朝見たとき、すごく嫌な気分になるし」
B 「わかるわー! 本当に嫌だよね。だから私、食器洗い機買っちゃった。すごく便利!」
A 「そうなんだ! でも私の家、キッチン狭いんだけど、置けたりするのかな?」
B 「うちのキッチンも狭いよ。2人分の食器洗い機だから、これぐらいの大きさ」
A 「へー! それならいけるかも。でも、音とか、うるさくない?」
B 「それが、そうでもないんだよ。寝る前にスイッチ入れても、全然気にならない」
A 「いいねー! じゃあ、私も買ってみようかな……」

驚くことに、話の内容は最初の会話例とほぼ同じ(食器洗い機の購入を勧める)ですが、直接アドバイスしていないこちらの雑談のほうが、Aさんは食器洗い機を購入したくなっています。しかも、もちろん会話も盛り上がっています。
したがって、相手に何らかのアドバイスをしたいと思ったときでも、いきなり相手の感情を無視してアドバイスするのではなく、「わかる!」と相手の感情に共感するプロセスを踏んでから、話を前に進めてみましょう。そうすると、雑談も盛り上がり、アドバイスも受け入れてもらえるので、一石二鳥です。
*雑談上手は「目に見えること」を褒める
雑談では、「相手を褒める」ことも会話を盛り上げる重要なアクションです。
でも、闇雲に褒めても、どこか嘘っぽくなってしまって、場が白けてしまうこともありますよね。
こういうときに役立つインプロの格言があります。それは、「Be present」という言葉です。
意訳すると、「今、自分の目の前にあることにだけ集中しなさい」という意味です。
目の前にないモノやことについて話しても、共演者もお客さんも、そのことを完全に理解できる可能性が非常に低く、そうすると話のリアリティが失われてしまいます
だから、雑談の上手な人は、今、自分の視界に入っている目に見えることについて、本心から感じたことに基づいて、相手を褒めます。
一方、雑談の苦手な人は、目にも見えないこと、もっと言えば、心にもないことを言って、相手を褒めようとしてしまいます。
次の会話例を見てください。
A 「すごくおしゃれなメガネですね!」
B 「え、そうですか? ありがとうございます。でも、そんな大したもんじゃないですよ」
A 「そのフレーム、何でできてるんですか?」
B 「あ、実はこれ、竹でできてるんです! ちょっと珍しいんですよ(笑)」
A 「へ~、すごい! 職人さんの手作りですか? 見せてもらっていいですか?」
B 「大丈夫ですよ!(わざわざメガネを取り外し、Aさんに渡す)」
A 「ありがとうございます。うわ~、間近で見ると、さらにおしゃれですね!」
B 「いや、それほどでもないですよ(笑)」
Bさんはおそらく恥ずかしがり屋タイプなのでしょうが、とてもうれしそうですね。注目してほしいのは、Aさんが「フレームを褒めている」点です。
「Bさんのメガネのフレームが普通の眼鏡とはちょっと違う(その上におしゃれである)というのは、その場で確認できる「目に見えること」です。
その場の事実に基づいて語っているので、Aさんの発言は嘘がなくリアルに聞こえます。
だからBさんはAさんの言葉をすんなり受け入れ、雑談が盛り上がるのです。
一方、目に見えない曖昧なことで褒めようとすると、どうなるでしょうか。
A 「最近Bさん、会社でご活躍されてるんですってね!」
B 「え、僕がですか? 全然そんなことないと思いますよ」
A 「この前、御社に伺ったとき、C部長がBさんのこと、しきりに褒めてましたよ」
B 「(いや、C部長は誰でも褒めるんだよ)そうだったんですね。それはうれしいな」
A 「(あれ? たいしてうれしそうに見えないな)どうしたんですか? もっと、自信持って喜んでいいことだと思いますよ」
B 「そうですね。ありがとうございます(上から目線でうるさいな! 事情も知らないくせに……)」

このように、目で見えないことについて発言してしまうと、よかれと思って発言したことでも、相手の機嫌を損ねてしまうことがあります。
よくあるのが「中年の人は、若いと言われると喜ぶはずだ」といった固定観念に基づいて褒めることです。
目の前に見える事実を踏まえず、安易に褒めたりすると、嫌味に聞こえがちです。
というわけで、雑談で何を話すべきか迷ったら、目に入ってきたモノやことに基づいて、それをトピックに話してみましょう。

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