「5G」を導入してからでは遅い、今確認すべき5つの懸念
John Fruehe
現時点では、「5G」にはまだ課題が残っていることは確実だ。5Gに準拠したデバイスが多くないことや、提供エリアが狭いことは、その一例にすぎない。
「5G」(第5世代移動体通信システム)は「4G」(第4世代移動体通信システム)よりもはるかに強力なモバイルネットワークになる見込みだ。
ただし5Gを利用するには幾つか考慮すべき点がある。企業が知っておくべき5つの懸念点をまとめた。
1.5Gデバイスの選択肢が少ない
ユーザー企業側には、5Gに準拠したスマートフォンやIoT(モノのインターネット)デバイスが必要だ。
通信事業者側には、5Gの基地局やネットワーク全体を束ねるインフラが必要になる。
エンドユーザーが利用するデバイスとしては、モバイルOS「Android」を搭載したスマートフォンで5G準拠のモデルが既に登場し、少数ながら既に出回っている。残念ながら、5G準拠の「iPhone」は、今のところ登場しておらず、当面はこの状況が続く可能性がある。
5G準拠のiPhoneに搭載されるモデムの調達先ベンダーが、最近まで確定していなかったからだ。
5Gに準拠したIoTデバイスも、一部の市場に出始めている。だがIoTデバイスベンダーの間で期待が広がっているのは、5Gよりも前の世代の通信規格だ。
スマートフォンの主流が5Gへと移れば、「3G」(第3世代移動体通信システム)や4Gで使われてきた周波数帯が開放され、IoT用途で利用できる可能性がある。
3Gや4Gで使用されている周波数帯は5Gの周波数帯よりも伝送距離が長く、電波が遠くに届きやすい特性があるため、IoTに適している。
2.電波が届きにくい
5Gが使用する電波の中には、高い周波数の「ミリ波」が含まれる。
ミリ波は、3Gや4Gが使用する電波よりも波長が短く、伝送距離も短い。
そのためミリ波を使用した5Gサービスのカバーエリアは狭くなる傾向がある。
ただしミリ波は伝送できるデータ量が大きくなる利点がある。
通信事業者は伝送距離の課題を克服するために、4Gまでよりもはるかに大規模なネットワークを構築し、十分なカバーエリアを確保する計画だ。
とはいえ5Gの導入を計画する企業は、契約する通信事業者が提供する5Gサービスのカバーエリアを調査する必要がある。米国では通信事業者は試験的に5Gの運用を開始しているが、現時点ではまだ幾つかの大都市圏をカバーしているにすぎない。本格的にサービス展開が開始すれば、カバーエリアは徐々に広がるだろう。
3.地方や遠隔地では、5Gサービスの早期開始は期待できない
5Gの利用が期待できる用途は、遠隔作業が必要な農業や鉱業などの分野にある。
だが通信事業者は、一部の地域における5Gサービスの展開は採算に合わないと考える可能性がある。
ただし、大口の顧客がコストの負担に協力する場合や、基幹通信網と5Gの設備をつなぐ中継網が既に敷設されている場合は、巨大な都市圏から離れた地域でもサービスが提供されることも考えられる。
4.提供開始当初は高コストになる
通信事業者は5Gへの多額の設備投資を回収するために、提供開始当初は利用料金を高額に設定する可能性がある。5G用のインフラを構築するには通信事業者は多大なコストを負担する必要があるため、まずはサービス提供の対象地域を特定の区画に限定し、利用料金を短期的な収益確保が可能な水準に設定する必要があるためだ。
だが、いずれは競争圧力が強まり、通信事業者は競争力を維持するために、5Gの利用料金を下げざるを得なくなるだろう。
5.5Gには新しいセキュリティ機能が必要になる
企業にとって幸いなことに、5G用のセキュリティの大部分は通信事業者が実装することになるだろう。
とはいえ、5Gのネットワークを利用してサービス提供する企業であれば、5Gの新しいセキュリティ機能を理解することが、安全にサービスを提供するためには不可欠だ。
このように、5Gを利用するには明らかに課題があるが、長期的に見れば5Gを利用することのメリットがデメリットを上回るだろう。
5Gは、長期にわたって企業にビジネスのアジリティー(俊敏性)を与え、競争力を高める機会をもたらすと考えられる。
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