ユニー・ファミマHDは2016年9月、ユニーグループ・ホールディングスとファミリーマートが統合して発足した。だが実際には「経営統合」というより、経営難に陥ったユニーをファミマが「買収」した、というのが業界の受け止めだった。
GMSは食品から衣料品・日用品にいたるまで、大型店舗で幅広く販売する業態だ。売り文句の「豊富な品ぞろえ」は、高度成長の時代には歓迎された。
だが社会が成熟するにつれ、消費者はそれぞれの商品にデザイン・機能などで個性を求めるようになる。急成長したのがユニクロやニトリといった専門店だ。ユニーのみならず、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂など業態が同じ他社も状況は同じと言っていい。
ユニーの佐古則男社長も「GMSの事業モデルは1990年代半ばには限界を迎えていた」と認める。
それでもファミマがユニーとの統合に動いたのは、ユニーが傘下に「サークルK」「サンクス」約6000店を全国展開するサークルKサンクスがあったからだ。
新商品の開発から物流システムの構築にいたるまで、コンビニは店舗数が多ければ多いほど経営効率が高まるビジネスだ。ファミマは過去10年、「am/pm」や「ココストア」などの買収により店舗網を約1万2000まで増やした。最大手セブン-イレブン・ジャパンの店舗網は当時で約1万9000。
サークルKサンクスはファミマにとって、喉から手が出るほど欲しい存在だった。
だが、ユニー側はサークルKサンクスの切り離しは認めなかった。不振のGMS事業だけが残されるのを恐れたためだ。 「GMSは不要だが、サークルKサンクスは欲しい」。
ジレンマを抱えつつも破談を避けたいファミマは、最終的にGMSを含めた統合を選ぶ。
店舗のリストラ策などで統合協議は一時難航したが、最後は「GMSが一緒でも成長の絵を描く確信が持てた」(当時のファミマ首脳)と押し切った。
だが統合後も、「GMSは不要」というファミマ側の本音は変わらなかった。
「サークルKサンクスを欲しいといってきたのであって、ユニーが欲しいといったことはない」。
統合交渉に携わったファミマ首脳の一人は2016年夏、グループ発足にあたっての日経ビジネスの取材にそう率直に答えている。
伊藤忠商事出身で17年3月にユニー・ファミマHD社長に就いた高柳浩二氏も、同年夏の記者会見で「ホールディングスの(事業構成の)バランスを考えると、GMSはもっと小さくしたほうがいい」と述べていた。
GMSをGMSとして再生させるのは難しいと確信したユニー・ファミマHDが頼ることにしたのが「激安の殿堂」、ドンキホーテだ。
多彩な商品を棚に詰め込む「圧縮陳列」や曲線を用いた店内レイアウト、視界を埋め尽くす圧倒的な量の手書きの販促物(POP)。
来店しなければ味わえない買い物の楽しさを演出し、18年6月期まで29期連続の増収増益を達成した小売りの異端児だ。
すでに提携効果は出ている。旧ユニー系店舗に「ドンキ流」を導入して改装した新業態6店は、18年3~5月期に客数が前年比75%増えた。ドンキに任せておけば間違いないという空気はユニー・ファミマHDに広がっていった。
不振事業の取り扱いにメドがついたことで、グループ経営の焦点は稼ぎ頭であるファミマ事業の成長戦略に移りそうだ。経営統合から進めてきたサークルKサンクス店舗のファミマへのブランド転換は11月末に完了する見通し。
ただ、この2年のあいだにコンビニを取り巻く経営環境は大きく変わった。
米国ではアマゾン・ドット・コムがITを駆使した新型店舗「アマゾンGo」を開いた。
ファミマもLINEと組んで次世代コンビニを開発すると明らかにしているが「コンセプトの発表後は大きな進捗はない」(関係者)という。
セブンイレブンが先鞭をつけた金融事業についても、ローソンがこのほど銀行免許を取得し、10月15日に消費者向けサービスの提供を始める。この分野でも、ファミマの存在感は薄い。
消費者に身近なインフラであるコンビニは、ユニー・ファミマHDの親会社である伊藤忠商事にとっても小売りにとどまらない新たなビジネスの場となりうる有望事業だ。
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